処遇改善加算で必須のケアプー、有効活用へ必ずすべきこと 業務転換を乗り越えるカギ
全国の事業所で「ケアプランデータ連携システム」の普及が一気に加速している。【Joint編集部】
新たな補助金や新年度の介護報酬の臨時改定がトリガーになった。訪問介護や通所介護、居宅介護支援などの「処遇改善加算」の取得要件に、その利用が明確に位置付けられたことで先行きも決まった。今後、在宅領域ではケアプー対応がマストになる。
ただ、実際に導入したものの「従来の業務慣習から脱却できない」「現場の負担が減らない」と戸惑う事業所は少なくない。持てる機能を有効に使い、真の生産性向上につなげるためには何が必要か。
ケアプー活用で内閣総理大臣表彰も受けた株式会社トライドマネジメントの長谷川徹代表に聞いた。

◆ 顕在化する生産性の二極化
「幅広い介護従事者を対象とする形で、新年度から処遇改善加算が拡充されるインパクトは非常に大きい」
長谷川代表は新年度の臨時改定をこう評価した。処遇改善加算の取得要件を満たす最適解は、もはや「ケアプー一択」と言っても過言ではない。

しかし、その「導入」は単なる通過点に過ぎない。何より大切なのは、これから全国で本格稼働されていく「介護情報基盤(*)」への対応を含め、ケアプーをうまく「利用」していくことにほかならない。
* 介護情報基盤=介護保険証や要介護認定、主治医意見書、ケアプランといった現場で必要な情報を、利用者、事業所、医療機関、市町村などがオンラインで迅速に閲覧・共有できる新たなインフラ。厚労省は来年4月から活用を順次スタートし、2028年4月までに全国すべての市町村で運用を始める準備を進めている。
「今ここで、ケアプーを導入するにあたって四苦八苦している事業所は、少し取り組みのスピードを上げた方がいいかもしれない」
長谷川代表は警鐘を鳴らす。地域では事業所間のデジタル格差が広がり、生産性の二極化が進行している。この地平の先で、時代の変化を前に立ち止まったままの事業所が淘汰されていく未来を予見し、「あまり猶予はない」という焦燥感を強めているようだった。
◆「土台がなければ進まない」
ケアプーの有効活用に向けて、長谷川代表は真っ先に必要なことに「対話」をあげた。
「なぜ導入しなければならないのか」「これからどうなりたいのか」
現場と徹底的に話し合う場を持つべきだという。
経営層が現場にタスクを与え、「これやっといて」と指示するだけの手法は通用しない。自ら現場に入り、旗振り役として積極的にコミュニケーションの機会を設けることが不可欠だ。
長谷川代表は「業務フローの転換はデジタル化と捉えられがち。もちろん間違いではないが、実はローカルの準備、環境整備といった土台がなければ進まない」と語る。

業務フローの転換は、とりわけその初期に必ず一定の負担を伴う。新たなシステムの導入などでやり方を変えれば、どうしても一時的に生産性が低下してしまう。
必然的に、職員はこれを「忙しいのに仕事が増えた」と捉える。取り組みを敬遠したり先送りしたりするほか、「無駄だ」「意味がない」などと強調することもある。
生産性を向上させたその先に、自分にどんな見返りがあるのか。もっと仕事をさせられるだけではないか。ここが不明確だと真剣に取り組まない職員もいる。
つまり、現場への丸投げで業務フローをうまく転換させることは難しい。経営層が明確な意思と方向性を示し、事業所内の共通理解を醸成していかなければならない。
ケアプーの場合、相手の事業所の対応状況も大きく影響する。こちらがデータで送っても、先方が紙で返してくることも「あるある」だ。長谷川代表は、「環境が十分に整うまではどうしても一定の時間がかかる。ここを無駄にせず、自社の業務フローをしっかり再構築する備えをしておくといい」と呼びかけた。
新たな仕組みがうまく回り始めれば効果は絶大だ。トライドマネジメントでは、利用者数が増えているにもかかわらず、FAX送信にかかる時間が月5時間弱から2時間弱へと大幅に短縮された。
長谷川代表は、「自社の課題解決にも合っているツールだと思ったし、厚生労働省や国保中央会というキーワードが出てくる以上、このツールが時代を変えることは間違いないと確信した。ケアプーのメリット・デメリットを分析しながらもこのツールを軸に、数ヵ月をかけて、どうすれば効率の良い業務フローが作れるかを、スタッフみんなで考えて実践した結果、次々と成果につながっていった」と笑顔を見せた。
ケアプーでは様々な書類を.pdfや.jpgなどで送受信するため、これを適切に保存することが不可欠となる。全て紙に印刷し、それぞれファイルに綴じるといった方法を抜本的に変えなければならない。
このため、多くの事業所がクラウドストレージを使うようになる。トライドマネジメントでは、事業所番号の記載やタグ付けなどのルールで必要な書類をすぐに引き出せる環境を作っており、これも業務負担の軽減につながっているという。長谷川代表は、ファイル管理の工夫も中長期的には重要な運用ポイントになると指摘した。

◆ あるべき姿のために
まださほど多くはないが、一部の市町村では新年度から介護情報基盤の運用がスタートする。これが全国で始まると、また新たな業務フローへの転換がすべての事業所に求められるようになる。
新年度の処遇改善加算には「誓約」などの経過措置があるが、今なお猶予期間がたっぷりあるかと言うとそうでもない。ケアプーの有効活用を早めに実現しないと、その先の対応がすべて後手後手に回ってしまうリスクが高い。
長谷川代表は、「介護情報基盤の本格運用(2028年度から)を見据えると、さすがにもう時間が少なくなってきた。今のうちから対話を重ね、しっかりとした土台を作っていくことが欠かせない」との認識を示した。その上で「そうした取り組みはやがて事業所の成長につながり、地域の高齢者を支えることに結びつく」と呼びかけた。










