【田中紘太】新年度の診療報酬改定、ケアマネ実務への影響は? 知っておくべき変化と介護報酬改定への布石
桜の季節になりました。新年度は介護報酬だけでなく、医療分野の診療報酬も改定されることになります。
今回は、2040年を見据えた「地域包括ケアシステムの深化」が鮮明となった新年度の診療報酬改定について、ケアマネジャーが実務で押さえておくべき最重要ポイントを解説します。【田中紘太】
今回の診療報酬改定では、在宅医療の領域について、単なる医療提供の「量」から、重症者をしっかりと支えていくこと、年間の看取り数や緊急往診数、ICT活用、多職種連携などを踏まえた「質」の評価へと、大きく舵が切られました。
特に、退院支援や重症患者の在宅療養において、ケアマネジャーとの連携が「報酬の根拠」として明文化された点は、極めて重要な変化と言えます。
診療報酬改定は介護報酬改定にも大きな影響を与えます。そこで、2027年度の介護報酬改定で居宅介護支援にどんな変化があるかも考察しながら、具体的に解説していきたいと思います。
1. 入院前後をつなぐ新たな架け橋:「介護支援等連携指導料2」の新設
新年度の診療報酬改定では、入院中からケアマネジャーと医療機関が密に連携することを評価する「介護支援等連携指導料」に、より高い評価の「介護支援等連携指導料2」が新設されます。
医療機関側がこの高い点数を算定するためには、入院時だけでなく、「平時からの連携体制」をケアマネジャーと構築していることが求められます。具体的には、医療機関の担当者が以下の会議などに出席していることが根拠となります。
◯ 地域ケア会議
◯ 在宅医療・介護に関するサービス担当者会議
◯ 病院や介護施設で実施される多職種連携に係る会議
医療機関に対し、ケアマネジャーが主催する会議への積極的な参加を促す強力なインセンティブが設けられたと言えます。また、入院日から原則7日以内の情報共有や、退院7日前までの連絡などの規定も盛り込まれています。
◆ 病院側の反応に変化も?
2027年度の介護報酬改定においては、こうした動きが介護側の要件にも跳ね返ってくる可能性が極めて高いと言えます。
例えば、退院・退所加算や入院時情報連携加算の要件に、「平時からの病院との連携実績」や「病院スタッフの会議招集」が追加されるかもしれません。また、特定事業所加算の要件、あるいは運営基準そのものに、医療機関との定期的・構造的な連携が盛り込まれる可能性もあるでしょう。
いずれにせよ今回、病院側に「ケアマネジャーの会議に出るメリット」が報酬として示されたわけです。今後はケアマネジャーからの招集に対し、病院側の反応が劇的に良くなることが期待されます。
2. 訪問看護の変革:ICT連携と包括報酬の導入
新年度の診療報酬改定では、訪問看護についても大きな見直しが実施されます。ここでは主に2つ、医療DXの推進とホスピス型住宅などの評価の適正化を取り上げます。
ICTを用いて5ヵ所以上の機関と連携体制を構築し、多職種が記録した診療情報などを活用して計画的な管理を行うことを評価する「訪問看護医療情報連携加算」が新設されます。これにより、ケアマネジャーと訪問看護師がICT上でリアルタイムに病状やケア方針を共有する体制が、経済的にも裏付けられました。
現場では既に、訪問診療、訪問薬剤、訪問看護、そして訪問介護やデイサービス、福祉用具までがICTツール(チャットツール)を活用し、リアルタイムに連携することがスタンダードになりつつあります。訪問診療や訪問歯科では従前よりICT加算が創設されており、今回の訪問看護での導入により、主要な医療サービスが出揃った形となります。
連携の要である居宅介護支援事業所においても、ICT活用を強力に推進する流れは止まりません。
2027年度の介護報酬改定では、居宅介護支援にも「ICT連携加算(仮称)」が新設される展開も予想されます。あるいは、新年度から新設される「処遇改善加算」の生産性向上に関する要件の中に、医療機関とのICT連携が必須項目として組み込まれる可能性もあるでしょう。
◆ 報酬は100万円から45万円へ
今回の診療報酬改定で大きな議論を呼んだのが、ホスピス型住宅などでの過剰な訪問看護の是正を目的とした「包括型訪問看護療養費(包括報酬)」の導入です。
これまでは、ホスピス型住宅と呼ばれる住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅で、日中、早朝夜間、深夜帯など1日3回、2名体制で介入するといった手法により、1人あたり月額100万円近い診療報酬が請求されるケースが見られ、これが報道などでもたびたび問題視されてきました。
今回の包括報酬化により、これが最大で約45万円程度(居住者数や訪問時間に応じた設計)まで抑制されることになります。
◆ ケアマネジャーへの実務的影響は?
ホスピス型住宅の入居者を担当するケアマネジャーは、大きな変化が既に起き始めていることを把握しておくべきだと考えます。
その1つが、ホスピス型住宅の特定施設(介護付きホーム)への移行です。従来の住宅型有料老人ホームなどから、今度は介護付きホームへ指定変更する動きが見られます。これにより、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが担当から外れるケースが増加しています。
現在の「特定事業所医療介護連携加算」では、ホスピス型住宅の入居者も在宅扱いとなって「ターミナルケアマネジメント加算」の算定につなげることができます。この仕組みを使い、算定回数(年間15回以上など)を容易にクリアすることで加算を維持していた事業所にとっては、ホスピス型住宅の介護付きホームへの移行が経営上のリスクとなるでしょう。
さらに、厚生労働省は昨年末、住宅型有料老人ホームの入居者に特化したケアマネジメントの新たなサービス類型を創設する方針を決めました。今後は、いわゆる「囲い込み」を防ぐための規制強化や報酬単価の別設定など、これまで以上に厳しいメスが入る可能性が高くなるでしょう。
◆ ケアマネジャーに期待される役割
新年度の診療報酬改定で国は、医療側に対し「平時からケアマネジャーと対話し、ICTを駆使して情報を共有すること」を強く促しています。
利用者が重症化しても安心して自宅で過ごすためには、例えば「訪問看護医療情報連携加算」を届け出ているような、連携機能の高い機関とのチーム作りが欠かせません。安定期には訪問頻度を抑えつつ、ICTでつながって急変時には即座に動く。そんな「効率的かつ密度の高い連携」を、ケアマネジャーが中心となって構築していくことが求められています。
診療報酬改定の内容を読み解くことは、次の介護報酬改定の方向性を前もって見極めることにもつながります。医療と介護は密接不可分、表裏一体の関係です。医療サイドの動きを正確に捉えることは、きっと居宅介護支援事業所の経営判断にも良い影響を与えるでしょう。










