2023年4月6日

締め切り間近の処遇改善計画書、注意すべきポイントは? 今回から簡素化された、という幻想を捨てよ=小濱道博

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《 小濱介護経営事務所:小濱道博代表 》

介護職員の処遇改善に関する加算の計画書の提出期限が迫ってきた。今年度分から様式が変わり、かなりの部分で記載項目が簡素化されている。【小濱道博】

そのため、今年度から処遇改善関連3加算(*)の要件が大きく緩和されて事務負担が減った、ように思える。


* 処遇改善加算、特定処遇改善加算、ベースアップ等支援加算を指す。


しかし、実はそうではない。関連3加算の算定要件が全く変わっていないことに留意すべきだ。すなわち、提出書類の記載項目がシンプルになっただけで、介護施設・事業所が行うべき作業や手間は昨年までと何も変わっていない。ここを見誤ると大変なことになる。


計画書を作成するプロセスでは、今年度の賃金改善額を算出するために、従来通り、前年1月から12月の賃金総額を集計しなければならない。


前年から当期までの間に入退職者がいた場合の調整も同じだ。新たに雇用した職員は、前年に在籍していたと仮定した賃金額を見積もったうえで、前年の総賃金額に加える作業が必要である。退職者がいた場合は、前年の賃金総額から該当する職員の賃金総額を差し引く作業をしなければいけない。


今年度からベースアップ等支援加算も加わったため、作業量は前年より確実に増えている。また、様式の簡素化に伴って、賃金水準を下げないことの誓約を新たに書面上で求められることにもなった。ここで誓約したということは、計算ミスなどで賃金水準が下がっていた場合であっても無条件で返還指導となる。

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計画書を作成する担当の皆さんは、前年1月から12月の賃金総額から、最初に加算を算定した前年以降で定期昇給や新たな手当の創設、賞与の引き上げなどを実施した総額を、「独自の賃金改善額」として相殺できることをご存じだろうか。


これを活用していないと、毎年、加算額以上の自腹を切って賃上げをしなければいけなくなってしまう。この仕組みを使うことで、年度が変わる度に加算分を賃上げする必要がなくなる。


この独自の賃金改善額の記載は今年度の様式で省略された。このため、賃金改善額を算出する際の相殺処理とその計算過程の記録が必要となっている。


賃金改善による賃金上昇分に対応する法定福利費の法人負担分も、賃金改善額として相殺できる。この金額も賃金改善額の15%程度に達するため、忘れずに計算して相殺したいものだ。確実に法人の負担を減らすことができる。


また、ベースアップ等支援加算の算定要件にも注意が必要だ。ご存知の通り、賃金改善額の3分の2以上を毎月の基本給、または決まって支払う手当で支給すべきと定められている。


この点で誤りがちなのが、加算総額の3分の2以上を月額ベースで支給しているケースである。この算定要件は、“賃金改善総額”の3分の2以上であって加算総額ではない。ここを誤ると算定要件を満たしていないとされ、加算全額が返還対象となるので注意が必要だ。

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ここに記した注意すべきポイントは、7月に提出する実績報告書においても同様である。


繰り返すが、簡素化されたのは様式だけであって、その帳票を完成させるまでの作業プロセスは、何も簡素化されていない。その確認作業は今後の運営指導などで実施されるため、計算根拠となる証憑書類の保管も義務である。これらは、社会保険労務士や税理士などからも多く質問を頂く項目だ。事務処理を専門家に丸投げするのではなく、介護施設側も理解を深めるべきである。


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