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2023.06.12 》

介護施設の医療体制の強化が急務 多職種連携をどう作るか 職員を守る時代に適した突破口

介護施設の医療体制の強化が求められている。これは古くて新しい課題だ。


以前から継続して必要性が指摘されてきたが、高齢化に伴い医療ニーズが更に高まって切迫度が増した。次の介護報酬改定をめぐる国の議論でも、具体策のあり方が分野横断的な論点として位置付けられている


念頭に置かなければいけないファクトは、大事なリソースがかなり限られていることだろう。財源もマンパワーも十分とは言えず、その確保がこれから一段と難しくなっていくことは疑いようもない。

《 画像はイメージ 》

大きな制約が課されている状況下で、介護施設はどんな医療体制を目指していけばいいのか。改めてじっくり考える機会を作りたい。


関東を中心に在宅医療の最前線を担う「医療法人社団悠翔会」の佐々木淳さんと、介護施設の医療体制を補完するサービスを展開する「ドクターメイト」の青柳直樹さん。2人のトップランナーの医師に語り合ってもらった。今どんなビジョンを描いており、何が事態を好転させるカギになるとみているのだろうか。【Joint編集部】


◆「最適な対応が行き届かない」

《 左:佐々木淳さん|右:青柳直樹さん 》

青柳:こんにちは。どうぞよろしくお願い致します!


介護施設の医療体制について対談の機会を頂きましたが、佐々木先生は今、現場にどんな課題があると考えていますか?


佐々木:はい。こちらこそよろしくお願い致します!


現場の課題ということですが、それはやはり、必ずしも十分に医療サービスが行き届いていない実態がある、ということではないでしょうか。多くの関係者の皆さんが日夜ご努力をされておられますが、それでもやるべきことが山積みですよね。


もちろん多様なケースがあるのですが、要介護の高齢者の場合、例えば体調が悪くなっても入院が必須の状態ってそう多くはありません。入院すると“生活”から切り離されてしまい、足腰が弱ったり、認知症が進んだり、食事がとれなくなったりして、逆に悪化して帰ってくることもあります。

《 佐々木淳さん 》

ですから、そもそも体調が悪くならないように日頃から丁寧にケアをしたり、悪くなっても介護施設で生活を続けながら容態を回復させたりすることも、入院して頂くことと同様に大切です。ただ、そうした“最適な対応”がとれていないことも多々あるのが実情ではないでしょうか。


我々は自らのミッションの1つに、必要のない入院を減らして介護施設や在宅での看取りを増やすこと、を掲げてきました。今も24時間、365日の体制で職務にあたっていますが、依頼が多く全てはカバーしきれないのが現実です。


しっかりしたケアを受けられている人がいる一方で、必ずしもそうとは言い切れない人もいるのが課題です。個々の置かれた状況によって受けられるサービスの質に差が出ていることは、国民皆保険の理念から考えてもおかしいと言わざるを得ません。


青柳:私も同じ問題意識を持っています。介護現場の怠慢なんかでは決してないですよね。医療側もなんとかしたいと思いつつ、なかなか対応しきれていないのが現状ではないでしょうか。人手不足が深刻化していく中で、状況は以前にも増して厳しくなっていると感じます。

《 青柳直樹さん 》

私の場合は、起業してこうした問題の解決に取り組むことにしました。日中の医療相談や夜間のオンコールを引き受けるなど、介護施設のスタッフ、看護職と介護職の双方を外部からきめ細かくサポートしていく「24時間医療相談サービス(*)」を作りました。あわせて、介護職が医療知識を気軽に学べる環境を提供する「DM-study」も展開しています。


今後もこうした独自の新しいアプローチで、医療体制の強化や介護現場の負担軽減などを率先して後押ししていきたいと考えているのですが…。佐々木先生はこれから介護施設が目指すべき医療の姿とは、どのようなものだと考えていますか?


* ドクターメイトの「24時間医療相談サービス」
外部の専任の医師や看護師に夜間のオンコール代行も含めていつでも頼れる仕組み。職員の負担軽減や労働環境の改善を進められ、それが看護職・介護職の採用にもつながる点が魅力だ。介護施設の医療体制の脆弱さを補い、同時に人材確保の決め手にもなる専門サービスとして現場の支持を広げている。

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◆「看護・介護職の活躍を支える医療に」


佐々木:そうですね。介護施設でも在宅でも、要介護の高齢者が求めているものって基本的に医療ではなく“ケア”なんですよね。1秒でも長く生きるために的確で高度な治療を、と望む人は少ないです。そんなことよりも、残りの人生を穏やかに、好きなことをしながら楽しく生きていきたい、と望む人がほとんどでしょう。


医者は往々にして、「あれはダメ」「これはダメ」とすぐに“ドクターストップ”をかけてしまうわけですが、大事なのはやはり本人の希望、価値観、生き方です。多少のリスクはあるけれど、この人にはこれをさせてあげてもいいのではないか − 。そんな総合的な判断に基づくケアも、私は大切だと考えています。

《 佐々木淳さん 》

こうした判断の担い手って、私たち医者よりも看護師の方が適任ではないでしょうか。医療の視点と生活の視点の双方を持ち合わせているからで、ここに介護職が関わってもいいですよね。医者は常に指示を出すようなことはせず、看護師らの相談に応じたり、必要に応じて関与したりすれば十分ではないでしょうか。


目指すべきは看護師らの活躍を下支えする医療体制。ケアの方針を総合的に判断できる看護師らを中心として、介護現場でケアを完結させる仕組みを育てていくことが重要だと考えています。そうした体制になっている介護施設って、入所者の満足度や看取り率も自然と高くなるんですよね。


青柳:分かります。看護師がのびのびと働いている施設って、すごく雰囲気もいいんです。ケアとキュアの組み合わせを自分達で判断できていて、なんと言うか、施設がしっかり自立しているような頼もしさもあるんです。


病気や怪我の治療だけに着目した医療って、やっぱり要介護の高齢者にとっては不十分と言わざるを得ません。生活の視点も併せ持つ看護師らを支える体制を作ろう、という意見には賛成です。そうでないと今後の超高齢社会で求められる医療の役割を果たせないかもしれません。

《 左:佐々木淳さん|右:青柳直樹さん 》

介護保険の理念には“自立支援”がありますが、自立すべきなのは何も高齢者だけではないですよね。医療、看護、介護など専門職がそれぞれ自立していく、という視点があってもいいのかもしれません。


◆ 多職種連携は「サッカーチーム」。介護は「アート」。


佐々木:仰る通りですね。少し重複はありますが、医療、看護、介護はそもそも専門性が異なっていることを忘れてはいけません。その専門性を各々が発揮していくことが大事だと思います。


この業界には揺るがぬヒエラルキーがある、とずっと言われてきました。医者がトップで看護師、多職種、介護職…、みたいな。これは本当にくだらない。もういい加減やめましょうよ。


医者がいくら威張っても、高齢者の尊厳や生活を1人で守りきれるはずがありません。ご飯を食べさせる人、移乗・移動を支える人、話し相手になる人がいないと成り立たないのは明白です。そんな当たり前のことを見ないで、「ヘルパーごときが」なんて思っているような人にはこう言ってあげましょう。「医者ごときが」と笑。

《 佐々木淳さん 》

医者には医者の役割、責務があるわけですが、大切なのは“本人の残された命をより輝かせるためにはどうしたらいいか”ということです。中心となるべきはやはり看護職、介護職ではないでしょうか。医者はその専門性を活かしてサポートすべきで、ましてや彼らを馬鹿にするなんてとんでもない筋違いです。


私はよく「サッカーチーム」と言ってきました。介護現場では全ての職種が同じフィールドでフラットに仕事をします。前線や中盤で中心となって活躍するのは看護職、介護職。医者はゴールキーパーとして後ろで構え、危ない時は守護神としてしっかりセーブにあたる。こういう役割分担にすれば、みんながのびのびと能力を発揮できるのではないでしょうか。


青柳:サッカーチーム。分かりやすい例えですね。みんながフラットに動くわけですから、介護職の皆さんも自信や誇りを持っていこうというエールにもなりますね!


やっぱり介護って絶対に欠かせない仕事ですし、人の人生をトータルで、とても深いところで支える究極のサービス業ではないでしょうか。うまく言えないんですけど、私はもうアートの領域に近いようにも感じるんです。

《 左:佐々木淳さん|右:青柳直樹さん 》

心身が衰えていって少しずつ最期に至るプロセスを誰が支えるのか。それは介護職しかいません。本人も含めてみんなが「良い最期だったね」と納得できるかどうかは、やっぱり介護職の関わり方にかかっていると思います。これは立派な専門性で、こうした認識を共有していくことが大事ですよね。


介護職の専門性とは何か。よく話題になるテーマでもありますが、佐々木先生はこれをどう考えていますか?


◆「介護の専門性は看取りにあり」


佐々木:そうですね。いま少し話が出ましたが、私も“しっかりした看取り対応ができるかどうか”だと思っています。


人生の最期が近づき、段階的に弱っていく過程にある高齢者にはケアが欠かせません。本人が納得して、安心して生き切ったと思えるかどうか、ケアを受けつつも最期まで自分の人生を全うできたと感じられるかどうか。これが介護の専門性ではないでしょうか。

《 佐々木淳さん 》

逆に一般的なお世話をして、必要な管理をして、お部屋も体も汚れていなかったとしても、そこに本人の選択がなければケアとは言えません。偉そうな医者から「お前に何ができるのか」と言われた時に、そんな風にしっかりと言い返せる介護職が増えていけば、状況はもっと良くなっていくと思います。


青柳:本当にそうですね。看護職、介護職には責任感が強く、そうした専門性を発揮している人が既に沢山いると思います。


ただ、仕事を頑張り過ぎちゃうことも少なからずあるので、その辺りはぜひ気をつけて頂きたい。現場で話を聞くと、「休むことなんてできない」「私がやらなきゃいけない」といった声をよく聞くんです。


これは素晴らしいことですが、もしそれで倒れたりバーンアウトしたりすると本末転倒ですよね。やっぱり持続可能な働き方を選んで頂きたいですし、今後はそうした意識が更に大事になるのではないでしょうか。

《 青柳直樹さん 》

◆「優先すべきは自分たちの幸せ」


佐々木:そうですよね。やっぱり現場は大変ですし、業務負担や責任の重さを考えると、私は給料も安すぎると思います。


国は介護職がしっかりと食べていける処遇にすべきです。介護職が不足している問題にも正面から向き合って頂きたい。誰かを支えたいと思って仕事に就いた人が低賃金・重労働では、とてもじゃないけどその思いを実現し続けることなんてできません。


青柳:処遇改善に加えて負担軽減の取り組みも重要ですよね。我々は介護施設の医療体制を補完するサービスを提供し、現場の看護職・介護職をサポートすることに力を入れてきたのですが、佐々木先生は普段現場でどんなことを意識されていますか?


佐々木:職場環境の改善が特に大事かなと思っていて、組織内でいくつかルールを決めました。常に自分の健康と家族、または愛する人を優先させること、一定の時間的な自由を確保して余暇の楽しみも大切にすること、などがあります。

《 左:佐々木淳さん|右:青柳直樹さん 》

このルールに則って残業は基本的にさせません。休日は年間で定められた日数を必ず取るように求めています。家族の記念日や子どもの授業参観、運動会、卒業式などの機会では休むよう促します。「休暇が欲しい」と言い出しやすい雰囲気を作り、それをみんなで理解し合い、お互いに補い合う文化を作ることを意識してきました。


優先すべきはあくまでも自分たちの幸せ。この認識を共有しておくことがポイントです。そのことが人を幸せにすることにもつながる、と考えます。みんなが休みをしっかりと確保できるようにするためには、ICTの活用などによる業務の効率化も絶対に欠かせませんね。


青柳:職場環境の改善や業務の効率化は、まさに我々が力を入れているところなんです。


以前、それこそ365日、1年中ずっと夜間のオンコールを受けている看護師さんにお会いし、「もういい加減疲れた」と言われたことがあったんです。そこで「ドクターメイト」のサービスを使って頂き、「オンコールは我々が担うので休んで下さい」と伝えました。

《 青柳直樹さん 》

後になってその方からメールがあり、「ずっと張り詰めていたけど開放された。気が楽になって日中のケアに力を注げる。久しぶりに楽しい余暇も過ごせた」とお礼を頂きました。現場の負担を軽減するって簡単ではないですが、本当に意義の大きなことですよね。メールをもらって私も喜びを感じました。これが今でもモチベーションになっているんです。


佐々木:いいですね! 我々も組織運営にあたっては、全て自分たちの力だけで事業を進めていくというスタンスはとっていません。周囲の様々なリソースをうまく活用することで、本来の強みを最大限に発揮できるようにすることを目指しています。サービスの質の面でも経営の面でも、その方がプラスに働くのではないでしょうか。


青柳先生の仕事は医療と介護をつなぐことですし、その際の面倒なところを効率化していくことだと思います。介護現場にとっては有益でしょうね。看護職、介護職がもっと楽になれば、めぐりめぐって我々もより良い仕事ができるようになるはずです。今後も頑張って、関係者みんながウィンウィンの素敵なサービスを作って欲しいなと思います。

《 左:佐々木淳さん|右:青柳直樹さん 》

* ドクターメイトの「24時間医療相談サービス」
外部の専任の医師や看護師に夜間のオンコール代行も含めていつでも頼れる仕組み。職員の負担軽減や労働環境の改善を進められ、それが看護職・介護職の採用にもつながる点が魅力だ。介護施設の医療体制の脆弱さを補い、同時に人材確保の決め手にもなる専門サービスとして現場の支持を広げている。

資料・問い合わせはこちらから↓

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