【足立圭司】生成AIで下げる生産性向上のハードル 無理なく始める“やさしい取組”のススメ
介護現場の「生産性向上」という言葉に対して、どこか身構えてしまうという声はいまだ少なくありません。人員不足が深刻化する中で、「これ以上、現場に負担がかかるのではないか」「人手を減らすことが目的なのではないか」といった不安が先に立ってしまうこともあります。【足立圭司】
2018年に介護分野の「生産性向上ガイドライン」が策定されて以降、国はガイドラインに示された6つのステップに沿って、介護現場での取り組みを促してきました。プロジェクトチームの立ち上げ、現状分析、実行計画の策定といったプロセスを通じて、介護テクノロジーの導入や業務の効率化、職員の負担軽減、さらにはサービスの質の向上を目指すものです。
また、各自治体でも介護テクノロジー補助金に加え、生産性向上の取り組みや機器導入を支援するワンストップ窓口の整備が進められています。
こうした取り組みの方向性や考え方自体は、極めて重要なものです。
一方で、現場からは「ガイドラインの内容は理解できるが、最初の一歩を踏み出すのが難しい」「委員会は立ち上げたものの、分析を行ったりする余力がない」といった声も聞かれます。すべての事業所が同じスタートラインに立てるわけではない、というのが実情ではないでしょうか。
◆「まずは小さく」。身近な改善から
そこで提案したいのが、「やさしい生産性向上の取り組み」という考え方です。これは、ガイドラインに代わるものではなく、ガイドラインに基づく本格的な取り組みへと進むための“前段階”として位置づけられるものです。
まずは、体制づくりや計画策定に入る前に、現場の身近な課題に目を向け、小さな改善から始めてみる。その積み重ねによって感触をつかみ、自信を持ったうえで、改めてガイドラインに立ち返る。そうした段階的なアプローチがあってもよいのではないでしょうか。
具体的には、現場の業務に潜むムリ・ムダ・ムラ、いわゆる「3M」を洗い出すことがひとつの入口になります。入浴介助や食事介助、記録業務など、日々の業務場面ごとに「大変だと感じていること」「非効率だと感じていること」を整理し、その中からひとつテーマを決めて、小さく改善してみる。大がかりな改革ではなく、「少し楽になった」「無駄が減った」と感じられる経験を重ねることが重要です。
◆ 生成AIを「補助輪」に
こうした取り組みを後押しする手段として、生成AIの活用も有効です。
例えば、生成AIに対して「介護事業所における3Mを、入浴介助や食事介助といった業務場面ごとにチェックリスト形式であげてほしい」と依頼すると、現場で起こりがちな課題が一覧として示されます。そのすべてを採用する必要はありません。自分たちの事業所にも当てはまるものがあるかを確認し、いくつかをピックアップするだけで、結果として課題の洗い出しがある程度できたことになります。
生成AIが行っているのは、分析や判断ではなく、考えるための材料の提示です。経験や時間に余裕のない事業所にとって、何から考えればよいか分からないという状態を乗り越えるための「補助輪」として活用することで、生産性向上の取り組みに着手する際の心理的・実務的なハードルを下げることができます。
生産性向上ガイドラインに示された6つのステップは、介護現場の取り組みを進めるうえで重要な指針であることに変わりはありません。その一方で、まずは「やさしい生産性向上の取り組み」を通じて現場なりの感触をつかみ、「できそうだ」「続けられそうだ」という実感を得ることも大切です。
そうした前段階を丁寧に支えることが、結果としてガイドラインに基づく取り組みを現場に根付かせる近道になるのではないでしょうか。










