介護の魅力発信、「キラキラ」よりも等身大の「モヤモヤ」を。そのリアルが一番刺さるはずだから。
介護の魅力発信と聞くと、どのようなイメージを持つだろうか。やりがいやポジティブな面ばかりを強調して見せる、現場から遠い場所で働く人が見栄えの良いコンテンツをつくる、といった「あるある」が浮かんだ人も多いのではないだろうか。【Joint編集部】
先月22日、SNSへの動画投稿やライティング、地域の場づくりなどを通じた介護職員による発信を表彰する「KAIGO LEADERS SCHOOL AWARD 2025」が開催された。

そこで評価されたのは、現場の実情を覆い隠すキラキラした感動シーンの切り取りではない。日々の仕事の中で葛藤し、悩みながら利用者と向き合う介護職員の等身大の姿だった。
※「KAIGO LEADERS SCHOOL AWARD 2025」の受賞者・受賞作はこちらから
◆ 葛藤や揺らぎも外へ開く
何かを発信しようとするとき、「こんな些細なことを伝えて何の意味があるのか」とためらうことは誰しもある。

この日、ゲストとして登壇した芸人・漫画家の矢部太郎氏は「評価はあくまで他人がすること。自分で評価を下すことなく、まずは発信してみたらいい」と背中を優しく押した。平凡なエピソードのように思えても、あるいは現場のありのままの温度感を伝えるだけでも、誰かがそこに思わぬ価値を見出してくれるかもしれない。

綺麗事では済まない毎日の現実も、表現に深い奥行きをもたらす価値の源泉になり得る。兵庫県立大学の竹端寛教授は、介護職員が抱える「モヤモヤ」を発信することの重要性を指摘した。
「本物のモヤモヤには人を動かし得る何かがある。どんな技術で表現するかよりも、本物の声、本物の思いをちゃんと届けようとしているかどうかが大切」
利用者を支えていくと必ずぶつかる悩み、葛藤、揺らぎ、もどかしさの中にこそ、介護という仕事の魅力があるという。洗練されたコンテンツをつくるより、整理のつかない胸中をそのまま表に出すことが人々の琴線に触れる鍵となるのかもしれない。
介護職員の賃上げや負担軽減、働く環境の改善は何より重要だ。
ただ、現場からの発信がネガティブ一色になって辛苦のみが過度にクローズアップされれば、それが強い不協和音となって社会にこだましてしまい、結果として業界の行く末に影を落としかねない。壇上で挨拶した厚生労働省の金山峰之介護人材定着促進専門官は、「現場のひとりひとりの皆さんの発信があってこそ、介護の魅力は伝わっていく。迷い、揺らぎながらも感じるその魅力をぜひ発信し続けていただきたい」と呼びかけた。

KAIGO LEADERS SCHOOL校長の秋本可愛氏も、「ひとりひとりが今感じている魅力を率直に表現すればいい。発信は仕事の意義や価値を言語化して捉え直すことにもつながる。社会の偏見を払拭したり家族の孤独感を癒やしたりする力にもなる」と意義を強調した。そのうえで、「たとえ人数は少なくとも、皆さんのメッセージを受け取る人はきっとどこかにいる。まずは身近な人に届けるというところからでも、ぜひ前向きな発信を始めてほしい」と語りかけた。








