2026年6月25日

【田中紘太】川口市ケアマネ殺害の重い教訓 居宅介護支援の加算新設やルール弾力化を急げ

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《 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー|田中紘太代表 》

6月1日に埼玉県川口市で、ケアマネジャーの女性が利用者宅で殺害されるという極めて痛ましい事件が起きました。【田中紘太】

この凶行は、地域で介護の最前線に携わる全ての関係者に強烈なショックを与え、大きな不安をもたらしています。「またか…」と憤りを感じた方もおられるでしょう。


介護現場でのカスタマーハラスメントや暴力は、決して今に始まったことではありません。行き過ぎた要求や暴言などはもはや日常茶飯事。昨年には神奈川県横浜市でケアマネジャーが刺される殺人未遂事件が起きているほか、過去には埼玉県ふじみ野市で医師が射殺される事件も発生しています。


度重なる悲劇が私たちに投げかけているのは、介護従事者を守る施策の強化が急務だという確かな教訓ではないでしょうか。


事件直後、厚生労働省は安全確保の徹底を呼びかける事務連絡を発出。日本介護支援専門員協会は声明を出したほか、国会審議でもカスハラ対策の実効性をどう高めるかが繰り返し取り上げられるなど、国をあげた動きも生じています。


この機を捉え、私はケアマネジャーを守る対策について意見を言いたいと思います。


◆ 自治体支援の限界と加算の新設


現在、一部の自治体が独自のカスハラ対策を講じ始めています。


例えば東京都では、利用者宅への同行訪問の支援として1時間1700円を上限に補助を出す仕組みがあり、これを事業所に周知する動きも見られます。居宅介護支援事業所を運営する立場としては、こうした補助はもちろん非常にありがたいのですが、率直に言って金額面などが不十分だと評価せざるを得ません。


他方、埼玉県は今回の事件の発生を受けて、同行訪問に対して1回あたり最大で5000円を補助する方針を打ち出しました。これは評価すべき内容ですが、あくまでも埼玉県内の事業所に限った話…。自治体の独自策に委ねているだけでは、やはり全国のケアマネジャーを守れる環境の整備にはつながらないのではないでしょうか。


そこで、居宅介護支援の介護報酬に加算を新設することを提案します。


例えば、訪問介護にはすでに利用者宅を2人で訪問する際に単位数が2倍となる加算が設けられています。一方、居宅介護支援にはこうした加算がありません。


危険と隣り合わせなのはホームヘルパーもケアマネジャーも全く同じ。制度的な矛盾を解消し、同行訪問の際に報酬を倍程度にする加算を居宅介護支援にも作るべきです。十分な報酬の裏付けさえあれば、今の厳しい人材不足の状況下であっても、居宅介護支援事業所は必要な時に同行訪問を実施する体制を作ることができるでしょう。


カスハラなどを伴う難しいケースの場合、担当するケアマネジャーは重い精神的な負担と業務量を引き受けます。大変なのは訪問時だけではありません。事業所内での報告・検討、地域包括支援センターや行政との調整・根回し、他事業所との連携・情報共有といった様々な対応を求められ、通常の何倍も時間と労力を費やします。


報酬を倍程度にする加算が必要と言いましたが、かかる負担を考慮すると十分な評価が不可欠ではないかと考えます。また、同行訪問の運用が難しい小規模な居宅介護支援事業所に対しては、自治体や地域の関係団体などがバックアップできる体制を作っていくことも必要となるでしょう。

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◆ サービスを断る「正当な理由」とは?


他にもまだできることがあります。ケアマネジャーを守るために、居宅介護支援事業所の運営ルールの弾力化も必要ではないでしょうか。


検討すべき施策は大きく2つ。第1に、事業所は「正当な理由なくサービスの提供を拒んではならない」という運営基準の弾力化です。


言うまでもなく、これは地域の高齢者を支えていくうえで極めて重要な規定です。ただし、サービスの提供をお断りできる「正当な理由」の1つとして、ケアマネジャーを苦しめるカスハラを明確に位置付けるべきではないでしょうか。居宅介護支援事業所を運営する立場としては、大切なケアマネジャーを守るためのやむを得ない現実的な措置だと考えます。


第2に、月々のモニタリング訪問に関するルールの弾力化です。現行、利用者の入院・入所などに限って未訪問でも減算を適用しない例外規定がありますが、ここにもカスハラを位置付けるべきと考えます。また、ケアマネジャーを守る観点からオンラインモニタリングを機能させること、そのために規制を緩和することも一案ではないでしょうか。


◆ 地域の「押し付け構造」を打破せよ


今後の検討にあたっては、対策の視野を居宅介護支援のケアマネジャーだけにとどめてはいけません。


地域包括支援センターの職員も、同様にカスハラなどの被害を頻繁に受けています。高齢者らの相談をなかなか拒否できない立場ですから、より厳しい状況に置かれていると言えるのかもしれません。もちろん、障害福祉の分野も厳しい状況は同じです。市民像を性善説のみで捉え、ケアマネジャーやホームヘルパーに我慢を強いる地域の押し付け構造を変えていかなければいけません。


もちろん、私たちにも専門職としての責務や矜持があります。今日も多くのケアマネジャーが地域で高齢者の生活を献身的に支えており、今後も期待される役割を十分に担っていく姿勢が大切なことは言うまでもありません。問題は単純です。カスハラは論外。それだけです。


人材不足が加速するこれからの時代、地域で活躍しているケアマネジャーを守る対策を怠ってしまえば、サービス基盤はより脆弱なものとなってしまうでしょう。今こそ対策を強化すべき時です。来年度の報酬改定などの機を捉え、国には速やかに手を打っていただきたいと思います。


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