【村上久美子】介護報酬に賃金・物価の自動スライドを 現場の使命感に頼る「3年縛り」はもう限界
厚生労働省の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で9月30日に、来年度の介護報酬改定に向けた「基本的な視点(案)」が示された。【村上久美子】
その中では、物価や賃金の上昇が続く一方、介護サービスは公定価格であるため、事業者がコスト増をサービス価格に反映することは困難だと指摘されている。
また、介護事業者の経営を安定させるとともに、全産業の賃金動向を踏まえ、介護分野で他職種と遜色のない処遇改善を実現する必要性も掲げられた。
現場の実情を踏まえた問題提起として、この方向性は評価したい。しかし、重要なのは、これをどのような仕組みで実現するかである。
介護従事者の賃金は、事業者の収入の柱である介護報酬に大きく左右される。
介護報酬は原則3年に1度しか改定されず、改定率が物価や他産業の賃金上昇に追い付かなければ、介護従事者の賃金が多少上がっても格差は縮まらない。例えば、介護分野で2%の賃上げが行われたとしても、全産業平均が5%上昇すれば、相対的な格差はさらに広がる。
これでは人材の確保・定着は難しい。
そこで、介護報酬に「賃金・物価の自動スライド」を導入してはどうか。全産業の賃金上昇率や物価上昇率を客観的な指標として、3年ごとの改定を待たず、毎年度、介護報酬へ反映する仕組みである。
例えば、報酬のうち人件費に相当する部分は全産業の賃金上昇率に、光熱費、燃料費、食材費などに相当する部分は物価上昇率に連動させる。訪問介護では移動・燃料費、施設サービスでは光熱費や食材費など、サービスごとの費用構造の違いも考慮すべきだ。
ただし、こうした自動スライドだけで、既に生じている賃金格差が解消されるわけではない。低い賃金水準のまま他産業と同率で引き上げても、格差は残るからである。
このため、毎年の賃金・物価上昇に対応する「連動分」に加え、全産業平均との差を計画的に縮める「底上げ分」を別枠で確保する必要がある。雇用形態や職種を問わず、賃上げが基本給などですべての介護従事者に確実に届く仕組みも欠かせない。
今回の「基本的な視点(案)」には、必要なサービスの確保と制度の持続可能性を両立させることも示されている。しかし、低賃金によって介護人材が確保できず、サービス提供体制が崩れれば、制度そのものを維持できない。
介護従事者の使命感に頼り、「次の改定まで待ってほしい」と繰り返す制度には限界がある。「他職種と遜色のない処遇」を理念に終わらせず、経済の変化を毎年反映し、格差を着実に縮められる介護報酬制度へ転換すべきである。










