【和田誠】介護報酬が上がれば、現場は救われるのか 介護保険は誰のもの? 「サービス控え」を生まないために
介護現場の人手不足を解消し、介護職員の処遇改善を進めるために、「介護報酬の引き上げ」を求める声が高まっています。【和田誠】
確かに、現場を支えるホームヘルパーや介護職員の処遇改善は一刻の猶予も許されない課題です。
しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。事業所に支払われる介護報酬だけを引き上げたとき、サービスを利用する当事者や家族の暮らしには何が起きるのでしょうか?
◆ 単価引き上げで生じる「利用量の目減り」
介護保険制度は、利用者が尊厳を保持し、住み慣れた地域で自立した日常生活を営むための不可欠な社会基盤です。
しかし、在宅介護を支える基本サービス費や加算が引き上げられても、それを受けるための枠組みである「区分支給限度基準額」が、そのまま据え置かれたとしたらどうでしょう?
各サービスの単価(介護報酬)が上がれば、限度額の枠内で利用できるサービスの「量」は実質的に目減りしてしまいます。限度額を超えて全額を自己負担するか、さもなければ必要なデイサービスや訪問介護の利用回数を減らすしかありません。
すでに長引く在宅介護の中で、「いつまで貯金を取り崩せるのか」「離職して自分が抱え込むしかないのか」などと限界まで追い詰められている当事者世帯にとって、これは単なる計算問題ではないのです。
◆ ケアの質と量を減らさないために
介護報酬の引き上げが、結果として当事者の経済的負担を増やし、「サービス控え」や「利用断念」を引き起こしてしまう。これでは、適切な在宅ケアをあきらめざるを得なくなり、結果として「介護の質」も「介護の量」も損なわれてしまうのではないでしょうか?
ケアの担い手を守るための改定が、ケアを受ける当事者を追い詰めることになってよいはずがありません。介護の質と量を決して減らさないために、制度はどうあるべきなのでしょうか?
◆ 処遇改善と「区分支給限度基準額の引き上げ」を両輪に
「認知症の人と家族の会」は、国の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)に対して、来年度の介護報酬改定に向けた要望書を提出しました。
職員の抜本的な処遇改善とともに、利用者が経済的な理由でケアをあきらめずに済むよう、「区分支給限度基準額の適切な引き上げ」と「低所得者層へのきめ細かな負担軽減策」を、同時に検討することを強く求めています。
現場で働く人を支えることと、当事者の暮らしを守ること。この両輪をいかに成り立たせるのか、今まさに制度の真価が問われています。












