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2023年6月6日

【小濱道博】改正介護保険法が成立 国は、制度は守っても個々の事業者は守らない

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《 小濱介護経営事務所:小濱道博代表 》

5月12日に国会で、2024年度の制度の見直しに向けた改正介護保険法が成立した。今回の法改正は小規模なものでは無い。また、介護事業者に直接的に影響する重要な改正である。【小濱道博】

過去、介護事業者に直接的に影響する大きな改正となったのは2012年度以降だ。それまでは、介護保険法がスタートしてからまだ日が浅いこともあって、大規模な法制度の変更は行われていない。


2012年度改正では、地域包括ケアシステムを実現する新たなサービスとして、「定期巡回・随時対応サービス」と「複合型サービス(現在の看護小規模多機能)」が創設された。


2015年度改正では、予防訪問介護、予防通所介護の2つが給付サービスから市区町村の「総合事業」に移管され、これが2017年4月より完全実施されたのである。また、定員18人以下の小規模デイサービスは地域密着型へ移行された。


2018年度改正は、より大規模な改正であった。そのポイントは、


(1)利用者の自己負担割合が変更され、所得に応じて1割から3割に設定された。


(2)高所得者ほど負担が増える総報酬割が介護保険料に導入された。


(3)要介護認定の有効期間が従来の24ヵ月から36ヵ月に延長され、更新の手間が軽減された。


(4)新たな介護保険施設「介護医療院」が創設された。


(5)福祉用具貸与の全国平均価格の公表と上限額の設定が行われた。


(6)共生型サービスが導入され、介護保険と障害福祉サービスが共存できる仕組みがスタートした。


一方、前回の2021年度改正は、介護事業者に直接的に影響する部分は少なかった。このため、制度改正が行われたという事実すら覚えていない方も多いだろう。前回の改正のポイントは3つで、


(1)通いの場の充実に向けて、ボランティア活動を行った地域住民にポイントを付与して好きな商品と交換できる仕組みが導入された。しかし、コロナ禍の直撃によって進んでいない。


(2)社会福祉連携推進法人が2022年4月よりスタートした。


(3)重層的支援体制整備事業が創設され、いわゆる「8050問題」の相談窓口を地域包括支援センターに設けた。


そして、今回の2024年度改正である。そのポイントは以下の3点に絞られる。


(1)新たな複合型サービスの創設と看護小規模多機能の役割の明確化。


(2)居宅介護支援事業所に介護予防支援の許認可を追加。


(3)財務諸表の公表の義務化と罰則規定としての指定取り消しも可能。


すべてが、介護事業者にとって何らかの影響を与える内容となっている。


新たな複合型サービスの詳細は不明であるが、仮に訪問介護とデイサービスを組み合わせた形になる場合は、既存の小規模多機能を含めて、その存在意義と市場バランスに大きな影響が出るだろう。


財務諸表の公表の義務化も、罰則規定として最大で指定取り消しまでが位置付けられたことで、事務量の増加は避けられない。


さらに、今回の法改正は二段階の審議となる。今年末までに次の3点の結論が出される見込みだ。


(1)高所得者の一号保険料の引き上げ。


(2)自己負担2割の対象者を、現在の所得上位20%から30%へ拡大。


(3)介護老人保健施設、介護医療院の多床室料の自己負担化。


これらが確定した場合、確実に利用控えや利用する事業所の選別が加速する。2024年度改正は、介護事業者に対して、新たな制度に合わせて変化することを求める改正である。


介護保険制度は自由競争社会にある。国は、制度は守っても、個々の事業者は守らない。だから自己防衛が必要なのだ。


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