daiichihoki-2024.12-sp-banner01
2023年7月20日

【石山麗子】ケアマネの人材不足、抜本的対策が必要 資質維持を前提に資格試験の要件見直しも検討を

このエントリーをはてなブックマークに追加
《 国際医療福祉大学大学院・石山麗子教授 》

今年は介護保険事業(支援)計画の策定年です。7月10日に開催された厚生労働省の審議会で、次の第9期介護保険事業(支援)計画の基本指針が示されました。【石山麗子】

この基本指針は、高齢者人口がピークを迎える2040年の社会、例えば、85歳以上の人口の急増、支え手となる年齢層の急減などを見通して、バックキャスト(将来時点から現在を見る)の考え方から、第9期に各自治体が何をすべきかを示しています。


私たちは、現在でさえ、既に介護人材不足から人口減少社会の厳しさを痛感しています。しかし、もしかするとこれは序章に過ぎないのかもしれません。


人を介してサービスを提供する介護業界では、人材確保の問題が介護の質に直結します。ただ、人数がそろえば良いというものではありません。業務効率化はもちろん大切で、しっかりと進めていく必要があります。とはいえ、それだけを追っていると、時に大切なものを見失うかもしれません。


今、私たちは根をはって、遠い未来のあるべき姿を見つめる大切な時期にあります。


厚労省が示した基本指針の見直しのポイントを確認しましょう。ポイントは3つです。


1. 介護サービス基盤の計画的な整備

2. 地域包括ケアシステムの深化・推進に向けた取り組み

3. 地域包括ケアシステムを支える介護人材の確保、介護現場の生産性向上


ケアマネジメント人材の確保は、上記ポイントの3つ目に該当し、次のように書かれています。

《抄》ケアマネジメントの質の向上、介護支援専門員の人材確保に取り組むことが重要である。


地域包括支援センターの職員については、人材確保が困難となっている現状を踏まえ、柔軟な職員配置と居宅介護支援事業所などの地域の拠点との連携を推進していくことが重要である。


また、地域包括支援センターの適切な関与を担保した上で、居宅介護支援事業所に介護予防支援の指定対象を拡大することに伴い、介護予防を居宅介護支援事業所と連携して推進していくことが重要である。


引用:第107回社会保障審議会介護保険部会|資料1-2.基本指針(案)について(新旧案)P12~13

monakaya-2024.10-article-sp-lead-banner01


居宅介護支援事業所は、今年の通常国会で成立した改正法の公布により、来年度から介護予防支援事業所として指定申請できるようになりました。


しかし、居宅介護支援事業所の人材確保が難しいなか、どれだけの事業所がこれを申請するのでしょうか。介護支援専門員の資格保有者は十分にいますが、実際にその職に就く人が足りない状況です。魅力ある抜本的な対策が必要です。


これまでのケアマネジャーの経験知と英知をもとにして、合理的かつ今日的なアセスメント、ケアプラン、モニタリングの各様式、そのICT連動、ChatGPTも活用したICT・AI連動による書類作成の効率化なども考えられます。


とはいえ、開発から実践適用までのプロセスは数年を要し、導入費用も莫大です。即効性は期待できません。


他に考えられることは、介護支援専門員の人口を増やす入り口政策を、質を低下させずに行うことです。なり手がいないからといって質を下げる施策は、介護支援専門員として被保険者への責任を果たす観点から賛同できません。


このような点に十分留意することを前提として、ケアマネ試験(実務研修受講試験)の受験要件や合格率の見直しなどの検討も必要でしょう。


Access Ranking
人気記事
介護ニュースJoint