2023年8月3日

【田中紘太】福祉用具の改革に注視を 選定の判断基準や例外給付のルールも見直しへ

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《 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー|田中紘太代表 》

厚生労働省が介護保険の福祉用具貸与・販売の改革に向けた検討を有識者会議で進めている。居宅介護支援の介護支援専門員にも、これから深く関係していく動きだ。【田中紘太】

有識者会議では複数の論点が提示されているが、今回はそのうち「貸与時の福祉用具の適切な選定」に言及したい。厚労省は2004年度に策定した「福祉用具の選定の判断基準」を見直す方針を打ち出している。


◆ 見直しの方向性は?


見直しのベースとなる考え方としては、


◯ 用具の選定は過不足のないことが重要。自立支援を阻害する過剰な貸与・販売、不足による活動の制限を避ける


◯ 給付の適正化につなげるために、今の現場の事例なども踏まえて多くの関係者がより活用できるようにする


などがあげられている。


この「福祉用具の選定の判断基準」は、2005年度からこれまで長く見直されてこなかったものだ。厚労省は見直しの方向性として、例えば以下のポイントを掲げている。


(1)2005年度以降、新たに給付対象となった福祉用具に関する記載の追加


(2)多職種連携の促進の観点から幅広い関係者を対象とする内容へ改める


(3)例外的な給付を行う際の留意事項の例示


(4)対象商品としての妥当性の判断に資する情報を充実させる


こうした視点は理解できる。ぜひ有意義な見直しを進めて頂きたい。私はこのうち、(3)例外的な給付を行う場合の留意事項の例示について少し意見を述べたい。

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◆ 現場の実態も反映を


2004年度に策定された「福祉用具の選定の判断基準」は、この年の6月17日に都道府県などへ発出された国の通知だ。鏡の冒頭では、


「要介護度の軽い人に対する特殊寝台、車いすの貸与など、利用者の状態像からその必要性が想定しにくい福祉用具が給付される事例も見受けられます。福祉用具が適正に利用されるよう、ケアマネジャーがケアプランに福祉用具を位置付ける場合の標準的な目安として通知します」


との趣旨が記載されている。現場では実際に、ケアマネジャーがケアプランに福祉用具貸与を位置付ける際の判断基準として活用されてきた。


例えば、車いすなら以下のように記されている。アセスメント時に歩行できている人への貸与は自立支援の趣旨に沿わない、という内容だ。

□ 使用が想定しにくい状態像=つかまらないで歩行できる


《考え方》車いすは、歩けない人や長時間歩くことが困難になった人が利用する福祉用具。つかまらないで歩行している場合の使用は想定しにくい。


□ 使用が想定しにくい要介護度=要支援


《考え方》つかまらないで歩行できる場合が多い「要支援」での使用は想定しにくい

「福祉用具の選定の判断基準」にはこのほか、例外的な給付についての記載もある。


例えば、原則として軽度者が給付の対象外となっている特殊寝台。日常的に起き上がり、寝返りが困難なことが、要介護認定に伴う基本調査の結果で明らかになった場合のほか、市町村が医師やケアマネジャーの見解を踏まえて判断した場合などについて、例外的な給付が可能とされている。車いすや床ずれ防止用具、移動用リフト、自動排泄処理装置などについても、同様の考え方が示されている。


このように、例外給付の判断基準は様々なケースを念頭にしっかりと提示されている。ただ、考え方にやや矛盾があったり整合性が取れなかったりする福祉用具、付属品も一部にみられるのが現状だ。


また、現場の環境も大きく変わっている。入院からの早期の退院や在宅でのお看取りも増えているなか、要介護認定の結果が出る前に福祉用具の導入が必要となるケースも少なくない。新規申請・更新申請の増加、認定調査員の不足などで認定結果が出るまでの期間が以前より長くなっており、暫定での支援が増えている実情もある。


退院前の迅速な福祉用具の選定、設置などが求められているが、認定結果が出てから要介護1以下だったと分かるケースもある。この場合、特殊寝台などの貸与が行われていると速やかに例外給付の届け出を出すことが必要となる。


お看取りの方の中には、ご逝去されてから認定結果が判明するケースもある。思わぬ軽度の判定が出て、ご逝去されてから例外給付を届け出ることになった事例もある。


具体的な内容は今後の議論に委ねられているが、「福祉用具の選定の判断基準」の見直しはこうした点にも配慮したものとなることを期待したい。見直しは来年度になる見込み。ケアマネジメントのプロセスでの判断基準、例外給付の流れなどが変わることも想定される。こうしたことも視野に入れたうえで、居宅介護支援の関係者は今後の展開を注視して頂きたい。


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