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2023年8月7日

【小濱道博】迫りくる通所介護の環境変化 来年度の改正で厳しく問われる事業者のマネジメント力

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《 小濱介護経営事務所|小濱道博代表 》

来年度の介護報酬改定に向けた審議も1巡目の終盤となり、サービスごとの論点が提示されている。この中で、小規模多機能と看護小規模多機能について、「更なる普及が求められるなか、期待されるサービスを安定的に提供していくためにどんな方策が考えられるか」といった共通の論点が示されている。【小濱道博】

◆ 予見される“施設ケアマネ”の見直し


この2つのサービスは、厚生労働省に最重点サービスとして位置付けられているにもかかわらず、未だに経営が安定しない状況が続いている。その原因の1つが、介護支援専門員のケアマネジメントがサービスに内包される“施設ケアマネジャー”の存在とされる。


居宅介護支援のケアマネジャーが利用者を小多機などに紹介する場合、結果として自らの利用者を手放すことになってしまう。このため、紹介するのを避けるケアマネジャーが一定数いるためだ。


こうした状況を踏まえ、過去の介護報酬改定をめぐる審議でも、小多機などのケアマネジメントを居宅介護支援へ移すことが論点となってきた。ただ、利用者の使い放題を助長して管理機能が働かない、などの理由で見送られてきた経緯がある。


今回の審議でも、“施設ケアマネジャー”の見直しを求める声が多い。“施設ケアマネジャー”と“居宅ケアマネジャー”を利用者が選択できる「選択制」を提案する声も出ているようだ。


小多機などのケアマネジメントを居宅介護支援が担当できるとなれば、“居宅ケアマネジャー”にとっては、介護サービスの選択肢として多機能型サービスを位置付けやすくなる。結果、その利用が今まで以上に進むことが期待できる。


そして、来年度の介護報酬改定でそれが実現する可能性は高いとみられる。その場合、通所介護にとっては確実に競合先となる。


◆ カギは自立支援・重度化防止の成果


今年5月に成立した改正介護保険法では、看多機の役割の1つとして「機能訓練」が明記された。今後、こうした多機能型サービスも機能訓練の場としての役割が強化されていくことになる。リハビリ特化型の多機能型サービスも、今後の差別化の中で登場してくると想定される。


その時、機能訓練を提供しない預かり中心のデイサービスは、更なる苦戦を強いられることになる。すでに、コロナ禍の影響で利用者のニーズやケアマネジャーの価値観は大きく変化しており、機能訓練を提供しないデイサービスが選ばれなくなってきている。


来年度に創設される予定の新しい複合型サービスが、大方の予想通り、デイサービスと訪問介護、もしくは、デイサービスと訪問介護、訪問看護の組み合わせとなった場合、これもデイサービスとの競合関係になることは避けられない。その場合、競争力で勝るのは機能訓練で成果を出す事業所となるだろう。


同時に、LIFEを活用できることも重要となる。LIFEは6月30日から、利用者別フィードバックの提供が始まっている。今はどの事業者もスタートラインで横一線にあるが、今後は確実に事業者間格差が開いていくはずだ。

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また、政府が今年の年末までに結論を出すとした、利用者負担2割の対象者の拡大(全体の20%から30%へ)が確定した場合、確実に利用控えが生じて“使われなくなる事業所”が出てくる。そうならないためには、利用者負担が倍額となっても使いたいサービス、使わなければならないサービスであることが求められる。


いずれにしても、来年度の制度改正・報酬改定は、預かり中心の昔ながらのデイサービスにとって大きな逆風となる可能性が高い。今のうちから機能訓練の取り組みを始めないと手遅れになる。そしてLIFEの活用は必須だ。


もっとも、機能訓練の取り組みとはパワリハの導入だけではない。機能訓練には、椅子やボールなど身近な備品を使ってできるプログラムが多数ある。重要なのは、利用者の身体能力を分析して目標を立てるアセスメント課程で、ひとりひとりの状態をしっかりと把握し、利用者に寄り添った機能訓練を提供できるかどうかである。


デイサービスの事業所数は飽和状態にある。2016年から今に至るまでの8年間、事業所数はおよそ4万3000ヵ所でほとんど変わっていない。毎年、相当数のデイサービスが新規開業する裏で、同数の事業所が廃業していることは前回も触れた


その事業所数が、小多機などのケアマネジメントの居宅介護支援への移行や、新たな複合型サービスの創設によって減少に転じる可能性がある。来年度の制度改正・報酬改定がひたひたと近づくなか、デイサービスの経営者にはマネジメント力が問われている。


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