daiichihoki-2024.5-sp-top-banner01
2023年8月25日

【田中紘太】サ高住への介護サービスのチェック、強化の方向 国は適正化事業を重点化へ

このエントリーをはてなブックマークに追加
《 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー|田中紘太代表 》

2021年度の介護報酬改定では、サービス付き高齢者向け住宅などで適正な介護サービスの提供を確保していくための施策も講じられました。国は今後、訪問介護や訪問看護、通所介護などの過剰な提供を抑制しようという動きを更に強めるとみられます。【田中紘太】

2021年度の介護報酬改定では、例えば、


◯ 訪問系サービスや通所系サービスなどについて、事業所と同一の建物に居住する利用者に対してサービスを提供する場合は、その建物に居住する利用者以外にもサービスを提供するよう努めることとする


◯ 集合住宅に居住する人のケアプランについて、区分支給限度基準額の利用割合が高い人が多い場合などに、併設事業所の特定を行いつつ、そのケアプランを作成する居宅介護支援事業所を抽出するといった点検・検証を行う


などが規定されました。


◆ カギとなる保険者の「評価表」


これを踏まえ、厚労省は2021年9月に通知「居宅介護支援事業所単位で抽出するケアプラン検証等について」を発出しています。その本文には、


◯ 区分支給限度基準額の利用割合が高く、かつ、訪問介護が利用サービスの大部分を占めるなどのケアプランを作成する居宅介護支援事業所を抽出する、といった点検・検証の仕組みを導入する(2021年10月施行)


との趣旨が明記されています。


こうしたケアプラン点検・検証を実施する際、居宅介護支援事業所などの抽出には国保連の「介護給付適正化システム」が使われることになります。居宅介護支援事業所を抽出する要件は、


◯ 事業所ごとにみて、区分支給限度基準額の利用割合が7割以上、かつ、その利用サービスの6割以上が訪問介護


とされており、これに該当する事業所にケアプラン点検などが実施されるようになってきています。


居宅介護支援事業所が使っている業務管理ソフトでは、上記の要件に該当しているか否かを確認する仕組みが必ずしも十分ではありません。このため、事業所が自らの状況を判断するのは難しい状況かと思われます。


そこで弊社では、保険者(市町村)に我々の区分支給限度基準額がどのような割合になっているか、などを確認しました。すると、「居宅介護支援事業所分析評価表(給付管理票)」のデータを頂くことができました。これにより、我々が保険者からどう評価・分析されているかを知ることができたんです。


この評価表には、


◯ 計画人数
◯ 計画サービス事業所数
◯ 訪問系比率(単位数)
◯ 医療系比率(単位数)
◯ 短期入所系比率(単位数)
◯ 地域密着型サービス比率(単位数)
◯ 計画の保険者(行政区)数
◯ 平均要介護度
◯ 限度額に対する計画率
◯ 1人あたりサービス種類数
◯ 同一法人率
◯ 計画事業所集中度
◯ 予防支援計画人数
◯ 介護支援専門員1人あたり人数(実績)
◯ 指導実施年月
◯ ケアプランチェック年月
◯ 単位数構成割合
◯ 最高紹介法人
◯ 圏域平均
◯ 国保連平均
◯ 保険者(行政区)別計画人数


などなど、実に詳細なデータが記載されていました。これを把握することで、保険者がどんな視点で居宅介護支援事業所をみているかがより理解できます。


重要な視点としては例えば、


◯ 訪問系サービスがサ高住などに偏っていないか


◯ 医療系サービスの偏りがないか


◯ 同一法人ばかりに偏っていないか


◯ 要支援者のケアプランも担当しているか


◯ ケアプラン点検や運営指導を受けているか


◯ 国保連や圏域の平均と比べてどうか


などがあげられるでしょう。これらで異常値が出た場合は、赤や黄色のマーカーでアラームが出る仕組みとなっています。保険者からすると、異常値が出ている場合は運営指導やケアプラン点検を行って確認する必要がある、ということになります。


事業所にとって、ケアプラン点検や運営指導に対応する負担はかなり大きいと言えます。一方、保険者の立場だと給付の適正化は重要な責務にほかなりません。


現場では日々介護業務が行われており、そのひとつひとつを保険者がつぶさに確認することはできません。このため、給付が適正に行われているか、問題がないかを判断することが容易でないことは想像に難くないでしょう。


したがって、上記のように給付管理に紐づくデータが活用されます。異常値に対してアラームを設けることで、一定のスクリーニングを効率的に行えるようになっているのです。

joint-seminar-2024.3-lead-banner01


◆ 給付適正化事業、再編・充実へ


さて、厚生労働省が今年3月に開催した自治体の担当者向けの会議では、介護給付適正化主要5事業の見直しについて触れられています。その中には、「保険者の事務負担の軽減を図りつつ、効果的・効率的に事業を実施していくため、主要5事業を再編(5事業を3事業に再編)するとともに、実施内容の充実を図る」と明記されました。


具体策のポイントとしては、


◯ 現行の主要5事業のうち、費用対効果を見込みづらい「介護給付費通知」を任意事業として位置付け、主要事業から除外する。また、実施の効率化を図るため、「住宅改修の点検、福祉用具購入・貸与調査」を「ケアプラン点検」に統合し、これに「要介護認定の適正化」、「医療情報との突合・縦覧点検」を合わせた3事業を主要事業として再編する


◯ 再編後の3事業については、全ての保険者で実施すること(実施率100%)を目指す


◯「ケアプラン点検」について、小規模な保険者でも効果的に実施できるようにするため、国保連の「介護給付適正化システム」で出力される給付実績などの帳票を活用した点検に重点化することとし、高齢者向け住まいなどの対策のケアプラン点検についても、その一環として推進していく


◯ 国保連の「介護給付適正化システム」で指導効果が特に高いと見込まれる帳票について、保険者はその帳票を活用し、自立支援に資する適正なケアプランになっているかどうか、という観点から対象事業所を絞り込んだうえで、効果的なケアプラン点検などの実施と実施件数の拡大を図る


などがあげられます。つまり国は、給付適正化主要5事業を3事業に集約したうえで、国保連の「介護給付適正化システム」を使って居宅介護支援事業所を抽出していく方針を明確に示しています。


今後、サ高住への対策としてのケアプラン点検を重点的に行っていく考えとみられ、こうした施策は全国的に推進されていくでしょう。私としても、介護保険制度がより健全に運営されていくために、こうした取り組みがうまく機能していくことを期待しています。


Access Ranking
人気記事
介護ニュースJoint