2023年10月25日

【田中紘太】ケアプランの「課題分析標準項目」改正のインパクト 影響は介護現場の幅広い関係者に及ぶ

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《 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー|田中紘太代表 》

10月16日に介護保険最新情報のVol.11781179が発出され、介護支援専門員が活用する「課題分析標準項目」が改正されました。これは介護保険制度が始まって以来、初の大幅改正と言えるものです。【田中紘太】

この「課題分析標準項目」は、居宅介護支援の運営基準や関連通知などでケアプラン作成時に活用すべきと位置付けられているもの。ケアマネジャーは利用者のアセスメントにあたり、最低限、具体的な23項目の情報収集・課題分析を行っていないと適切とは見なされません。


アセスメント様式については、関係団体が作成したものや個々の企業が独自に作成したものなどがあります。国の調査結果では、例えば「居宅サービス計画ガイドライン方式」や「MDS方式・MDS-HC方式」、「独自様式」などが多く使われていると報告されています。いずれも、課題分析標準23項目を網羅した内容となっています。


◆ なぜ改正されたのか


アセスメント・課題分析はケアプラン作成の土台となるため、ケアマネジャー業務の根幹と言っても過言ではありません。このアセスメントの根拠となるのが課題分析標準23項目ですから、今回の見直しには非常に大きな意味があると考えています。


従前から、例えば国の審議会などでも、「ケアマネジャーの質の向上」という言葉が繰り返し出てきています。これを反対に捉えると、ケアマネジャーの質が低いため改善させなければいけない、と言っているようにも受け取れます。


なぜ質が低いと言われるのか。その理由を紐解いていくと、「アセスメントが不十分」「課題分析ができていない」などの指摘が少なからずあり、結果として、アセスメント様式や課題分析標準項目の見直しに行き着くのではないかと考えられます。

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今回の介護保険最新情報のVol.1179では、課題分析標準項目の改正の趣旨について、


◯ 各項目の名称や「項目の主な内容(例)」の記載が一部現状とそぐわないものになっていること


◯ 来年4月から開始される介護支援専門員の新たな法定研修カリキュラムに「適切なケアマネジメント手法」が盛り込まれることを踏まえ、これとの整合性を図る必要があること


などから、文言の適正化や記載の充実を図ったと説明されています。新しい法定研修カリキュラムが始まる来年度を前に、このタイミングで課題分析標準項目を見直す必要があったと考えられます。


◆ 直ちに違反にはならない


とはいえ、今回の通知は直ちに強制力を発揮するものではありません。国は通知のQ&Aに、


◯ 全体として記載を増やしているが、各項目の解釈の違いで把握する内容に差異が生じないよう具体的な内容を例示したものであり、その全ての情報収集を行うことを求めるものではない


といった趣旨を記しています。また全国の保険者に対し、


◯ 実地指導などで「項目の主な内容(例)」に記載されている内容が把握されていないことのみをもって、アセスメントが適切に行われていないと判断し、基準違反とすることがないよう留意を


とも呼びかけています。このため、従前のアセスメント様式を当面活用していたとしても、直ちに運営基準違反に該当するものではないと思われます。

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◆ しっかり読み込んで着実に対応を


もっとも、いつまでもずっと従来通り、というわけにもいかないでしょう。


課題分析標準項目や法定研修カリキュラムが見直されることにより、整合性をとるために今後、ケアプラン点検支援マニュアルや運営指導(実地指導)マニュアルも見直されると考えられます。やはり、これまでのアセスメント様式の活用だけでは不足する項目も出てくるはずです。


各団体のアセスメント様式、個々の企業のアセスメント様式も見直していかないと、ケアプラン点検や法定研修の事例提出の際に指摘を受ける事態も予想されます。介護ソフトのベンダーやAIケアプランシステムの開発企業らも、必ず相応の対応を迫られることでしょう。


今回の改正は、単に課題分析標準23項目が細かくなっただけではありません。保険者、アセスメント様式作成団体、ベンダー、そしてケアマネジャー自身、多職種、ご利用者様、ご家族様など、介護保険の様々な関係者へ波及していくことになります。


ケアマネジャー自身が今回の通知、Q&Aをしっかり読み込むのは実務上当然のことです。他職種の方もやはり、ケアマネジャーがどんな視点でアセスメントを行うようになったのか、知っておく必要があるでしょう。その上で是非、ケアプランがどう変わっていくのかに注目して頂きたいです。


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