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2024年1月15日

【山口宰】話題の高齢者の推し活に確かな効果! 「誰かを支えること」が介護施設に生み出す好循環

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《 社会福祉法人光朔会オリンピア・山口宰常務理事 》

2023年12月、サッカーJ1をヴィッセル神戸が初制覇しました。実は私の運営する高齢者総合福祉施設「オリンピア兵庫」は、2022年6月より、サントリーウエルネス株式会社とJリーグのプロジェクト「Be supports!」に参画し、ヴィッセル神戸の応援をしてきました。


今回は、様々なメディアにも数多く取り上げられたこの取り組みについてご紹介したいと思います。【山口宰】

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◆ ヴィッセル神戸と「Be supporters!」


1995年1月1日、神戸の街にプロサッカークラブ「ヴィッセル神戸」が誕生しました。しかし、初めての練習が予定されていた1月17日、阪神・淡路大震災が神戸を襲い、練習場の確保もままならない状況が続きました。


それから苦節29年。2023年のシーズン、ヴィッセル神戸は初めてのJ1優勝を飾ることができました。


このヴィッセル神戸の初優勝を伝えるメディアに、たびたび登場していたのが「Be supporters!(Beサポ!)」という取り組み。これは、サントリーウエルネス株式会社が2020年からスタートしたプロジェクトです。普段「支えられる」立場になりがちな、施設で暮らす高齢者や認知症の方を「支える」存在にしよう、というコンセプトになっています。


取り組みは全国に広がり、現在までに約160施設、延べ約6千人が参加してきました。


その取り組み方も施設によってさまざま。お気に入りの選手を見つけたり、ユニフォームを着たり、手拍子やタオル回しを練習したり…。応援するチームや相手チームにちなんだご当地グルメ「サポ飯」をみんなで作って味わうという形もあります。


試合の日には、チームグッズで飾り付けされた空間で、体を動かしたり声を出したりしながら応援をします。もちろん、プログラムへの参加は強制ではなく、気分や体調に合わせて、ひとりひとりの楽しみ方をスタッフがサポートします。


このような取り組みの結果、健康が維持できたり、日々の生活の中で積極的になられたりと、参加された方々によい影響が生じていることが報告されています。

《 画像|オリンピア兵庫提供 》

◆ オリンピア兵庫と「Be supporters!」


私の運営する高齢者総合福祉施設「オリンピア兵庫」は、ヴィッセル神戸の本拠地である「ノエビアスタジアム神戸」から徒歩5分の距離に位置するということもあり、2022年6月から「Be supporters!」の活動に参画しています。


以前より、私が個人的に親しくしていた選手たちがときどき訪問してくれていたことはありましたが、今回のプロジェクトは、なんといってもサッカー好きなスタッフたちの熱意によって進められました。


もちろん、入居者のみなさんにとって、野球などのスポーツに比べると、サッカーはあまり馴染みのない存在です。しかし、施設内で定期的に観戦会を開いたり、サッカーに関連するイベントに参加したりしているうちに、興味を持たれる方も増えてきました。


お孫さんぐらいの年齢の「推し」の選手ができ、応援グッズを作ったり、選手とつながりができたりすることにより、会話が増えたり表情が豊かになったりするなど、前向きな変化が見られるようになりました。


入居者の服部千恵子さんは、当時ヴィッセル神戸に在籍していた元スペイン代表のイニエスタ選手を応援するためにスペイン語の勉強を始め、「VAMOS Iniesta(さあ行こう、イニエスタ)」とメッセージを送られました。サッカーの話題がきっかけとなり、「試合の日にはサポーターに駐車場を貸してたんや」と昔のことを話してくださるようになりました。


松本照子さんは、「推し」の藤本憲明選手にSNSで送った応援メッセージに、本人から返事が届いたことがサポーターの間でも話題に。「のりくん」が鹿児島ユナイテッドFCに移籍した後も交流を続け、今でもメッセージのやりとりをしたり、グッズをプレゼントしてもらったりしています。


◆ 107歳のサポーター

《 画像|オリンピア兵庫提供 》

そんなオリンピア兵庫でのBe supporters!の取り組みを一躍有名にしたのが、2022年の敬老の日に「人生の先輩からのエール」として、当時107歳だった竹本繁野さんが選手たちに向けて書かれた、ひとつのメッセージでした。


「命つきるまでサッカーを楽しみなさい」


この言葉のインパクトは非常に大きく、「107歳のサポーター」として、テレビ・新聞・ラジオなどのマスメディア、インターネット媒体やSNSなどで広く取り上げられました。そして、そのメッセージはヴィッセルの選手たちにまで届き、J1残留を争っていたチームを後押しすることとなりました。


2023年になり、オリンピア兵庫では、ブラジル人選手たちを応援しようと、ポルトガル語の勉強を始めることになりました。竹本さんも「ボアソルチ(幸運を)」という言葉を覚えるなど、ヴィッセル神戸の躍進を心待ちにしておられました。


しかし、108歳の誕生日を目前に控えた2月、竹本さんはご家族に見守られながら、天寿を全うされました。この竹本さんのストーリーは昨年、「人生100年時代物語大賞」の”最高齢のメッセージ賞”に選ばれ、多くのメディアにも取り上げられました。

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◆ チャレンジすることの大切さ


最初に「Be supporters!」の話を聞いたとき、私はこれほどの盛り上がりを見せるとは思っていませんでした。しかし、利用者のみなさんが一生懸命参加される姿を見て、いくつになっても、目標を持ってチャレンジをすることの大切さを改めて教えていただきました。


また、この取り組みを通じ、スタッフたちも大きく成長しました。「生活の主人公である利用者のみなさん」を中心に、スタッフも一緒に盛り上がることにより、チームの力を一段と強くすることができたように感じています。テレビや新聞などの取材を受ける機会も多く、最初のころは見ていてハラハラしましたが、最近では堂々とコメントができるようになっていて、とても頼もしく感じます。


なかなか先行きが見通せない昨今ではありますが、今年もたくさんのチャレンジができる年にしていきたいと思います。


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