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2024年4月25日

【天野尊明】介護保険改革の行方はもう見えている? 的確な未来予測を持って備えるために

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《 介護人材政策研究会・天野尊明代表理事 》

新年度の介護報酬改定の結果をめぐり、あちこちで様々な論評が盛んに行われています。そんななか、あまり触れられてはいないものの、しかし介護事業者の皆さまにとって実は重要な点について、改めて触れておきたいと思います。【天野尊明】

◆ 大きな方向性は見えていた


改定のたびに業界で耳にするのは、「大改革だ」「右から左へ急展開だ」といった感想です。たしかに、3年ごとに対応を迫られるのは非常に大変でしょう。事務的なことから日頃の事業のあり方まで、国の施策に沿って適切に変更しなければいけません。


ただ、大きな方向性についてだけ言えば、実は予め決められていることがあまり知られていません。それは他でもない、毎回の改定に先立ってまとめられる審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)の報告書に書かれています。


昨年12月の報告書を見てみましょう。終盤の57ページ、「今後の課題」のところにご注目下さい。


このコーナーは前回の改定前(2020年)、前々回の改定前(2017年)にも設けられています。その時々の議論で積み残したこと、それらを踏まえて国が次の改定で取り組もうとしていることが、網羅的に書き込まれています。


例えば2020年の報告書。「医療と介護の連携の推進」、「中重度・看取りへの対応」、「口腔・栄養の取り組みの充実」、「テクノロジーの活用」などがはっきりと書かれています。

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これを現実に当てはめるとどんなストーリーになるか、そしてその上に政治的な要素(処遇改善関連加算の一本化など)がオンされたと考えれば、今回の改定も青天の霹靂とは言えません。事前に描かれたストーリーが、それなりに忠実に具現化されていることが分かって頂けると思います。


今回の改定では特に、訪問介護の基本報酬の引き下げに対する批判が巻き起こっていますが、これも例外ではありません。直近の経営実態調査の結果が公表された昨年11月の時点で、実際の引き下げの度合いはともかくとして、ある程度は予想されていたことでした。


その是非については触れませんが、つまりは、当たり前のことを言うようですが、毎回の改定は「3年ごとに突然決まる」のではありません。「3年間の積み上げをベースに政治的要素を含みつつ決まる」のです。これを踏まえ、昨年12月にまとめられた報告書の「今後の課題」などを再確認して頂ければ、今後の道筋やヒントが見えてくるでしょう。

◆ 不利な戦いをどう避けるか


介護保険制度は、言うまでもなく多くの国民を支える社会保障制度の1つです。高齢者の命、尊厳に深く関わる重要な仕組みですから、極端な大改革は断行できない宿命にあります。むしろ、国は財政状況や人口動態などを考慮しつつ、ある程度決められた路線の上で濃淡の調整を繰り返しているだけ、と言っても過言ではありません。


その調整の方向を丁寧に読み解き、予め備えていくことが極めて重要です。これにより、改定のたびに右から左へ振り回されるようなことは避けられるでしょう。実際、健全な経営を実現されている介護事業者の方々は、日常的にそうした習慣を欠かすことがありません。


今後の介護業界に求められるのは、出された結果に驚きながら不利な戦いに挑むことではありません。「予測される未来に備えること」です。


3年後の改定に向けて、既に様々な検討が介護現場と離れたところで始まっています。それらにどうコミットしていくのか、筆者も含め、介護業界に関わるひとりひとりが、それぞれの立場で考えていかなければなりません。


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