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2024年4月30日

【黒澤加代子】訪問介護の基本報酬引き下げ、落ち込むのはもうやめた ヘルパーとして今したいこと

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《 日本ホームヘルパー協会東京都支部・黒澤加代子会長 》

新年度の介護報酬改定は、訪問介護の基本報酬が引き下げられるという衝撃的な結果となりました。全体の改定率がプラスだったので期待していたのですが…。寝耳に水とはこのことでしょうか。これほどのマイナスにされるとは、全く予想していませんでした。【黒澤加代子】

訪問介護に携わる者としては、「また私達だけが軽視されている」という悲しい気持ち、怒りがわいてきました。加えて、社会的評価を得ることの難しさも改めて痛感しました。


訪問看護師さん、ケアマネジャーさんなど周りの皆さまからは、温かい励ましの言葉をたくさん頂いています。


「どうしてヘルパーさんだけ報酬減なんだろうね。ヘルパーさんが必要な時代なのに…」


心配して下さる相手へ笑顔で感謝の気持ちを伝えながら、胸の内に悔しい気持ちがこみ上げてきます。


「どうして? なんで?」。当初は悶々とした日々を送っていました。ただ、いつまでも落ち込んでばかりはいられません。何度も繰り返し考えているうちに、発想の転換が必要ではないかと思うようになりました。


「文句ばかり言っていても何も変わらない。理由があっての結果だ。私達はこれからどうしていくべきなのか」。


次の2027年度の報酬改定に向けて、今から取り組んでいけることがあるかもしれません。常に希望を持って前へ進む力を強くしていく、というモチベーションを大切にしていきたいと思います。

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◆ 今後どう動くか


訪問介護は施設などと異なり、有資格者だけが従事しているサービスです。身体介護にも生活援助にも、相応の専門性が必要だからに他なりません。


ただ私達は未だ、自らの専門性を業界の内外の皆さまにしっかりと認めてもらえていないようです。要介護1と2のサービスを総合事業へ移す、という議論が行われているのもそのためではないでしょうか。こうした現状を変えるためにできることは、きっとまだまだあると思います。


例えば老計第10号。自立支援・重度化防止のための見守り的援助(身体介護1-6)の明確化は、訪問介護に対する国からのエールだったはずです。あの見直しから早6年ですが、現場で十分に取り組みが浸透しているとは必ずしも言えません。


新年度の報酬改定に伴い、ケアプランや訪問介護計画を見直すケースもあると思います。そうしたタイミングを捉え、ケアマネジャーへ自立支援・重度化防止のための見守り的援助について提案することも1つの手です。


「単位数がいっぱいだから生活援助で算定して欲しい」。そんな風にお願いされ、言われるままに請け負う時代に終止符を打つ時ではないでしょうか。


このほか、特定事業所加算をはじめとする各種加算を取得する努力も欠かせません。奉仕の精神は素晴らしく、私も引き続きそれを大切にしていくつもりですが、あわせて経営の視点も持たないと事業を続けていけません。


現場の思いと政府の考えに乖離があると思うなら、国の調査やパブリックコメントなどに協力して実情を積極的に伝えるのもいいでしょう。私もそうしていきます。幼い頃よく母に、「伝えたいことがあるのなら、だってだってと言わないできちんと言いなさい」と教えられたことを覚えています。


自分たちを守れるのは、やっぱり自分たちだけなのだと思います。私達ひとりひとりの行動で現状を改善していくことが、訪問介護の関係者が報われる未来へとつながるのではないでしょうか。

◆ 語り尽くせないヘルパーの魅力


改定直後の今は、皆さんも業務がとても大変だと思います。


少し私のことを話すと、契約書や重要事項説明書に必要な変更を加え、大量に印刷してご利用者・ご家族へ説明していたら、もう今日で4月が終わってしまいます。紙ベースで対応せざるを得ない場面も多々あり、あちこちに頭を下げながらご利用者宅を回っています。ややこしい処遇改善加算の通知、Q&Aとのにらめっこも終わりません。


世間様はゴールデンウイークだそうで、長い連休を取れる方々もおられると聞きました。一方、私達にとって今は、報酬改定後で初の国保連業務の期限が迫る重圧の時期。「苦しみウィーク」と言っている仲間もいます。


ヘルパーには祝日出勤、連休中出勤の手当もありません。酷暑でも台風でも、冬の冷たい雨や雪の中でも、地域で暮らすご利用者の生活を支えるために走り回ります。


それでも、私は訪問介護の仕事が大好きです。地域の中で割と自由に、それぞれ状態・環境が大きく異なるご利用者を、自分の専門性、スキル、個性を存分に活かしながら、創意工夫を発揮しつつ支えられるところが醍醐味ではないでしょうか。


先日あるご利用者から、「あんたたちはいつも笑ってるな」と言われました。なるほど、ヘルパーには明るく前向きな方が多いのかもしれないと気付かされました。


そんな人材がまだまだ残っていることは、きっと私達の強みです。ここから考え方をシフトし、前向きにできることからコツコツと取り組んでいけば、やがて希望の光を見出していけるのではないでしょうか。


今回の基本報酬の引き下げはとても残念でした。現場から強い反発の声が出るのは当然ではないでしょうか。


ただ、後ろ向きに捉えるのはもうやめました。寝耳に水をきっかけに飛び起きて、果敢にアクションを起こすことが求められていると考えます。私は今回の報酬改定を、そうした行動変容のきっかけにしたいと思っています。


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