daiichihoki-2024.5-sp-top-banner01
2024年5月8日

【小濱道博】保険者の運営指導が急増 介護事業者は細心の注意を

このエントリーをはてなブックマークに追加
《 小濱介護経営事務所|小濱道博代表 》

1,新たな監査マニュアルが発出


厚生労働省から各保険者に向けて、「介護保険施設等に対する監査マニュアル」が発出された。監査実績が少ない自治体の職員も含めて活用できるよう、監査業務の迅速化に向けて留意すべきポイントなどをまとめた内容である。【小濱道博】

コロナ禍も明けて、昨年度より運営指導の実施件数が急増している。それはまるで、コロナ禍の3年間の遅れを取り戻すかのような増加ぶりである。


今年度は更に実施件数が増加するであろう。それに伴い監査対象案件も増え、行政処分の件数も増加が見込まれる。今回のマニュアルは、これを迅速かつ効率的に処理するためのものである。


2,監査とは何か


そもそも、監査とは何か。まず、監査と運営指導の違いをみていく。


運営指導は、あくまで事業者の任意の協力によってのみ実現されるものであるから、強制力はない。しかし、事業者側に運営基準違反や介護報酬の不正請求などが認められる場合は別である。監査の実施によって事実関係を明確にしたうえで、一定の行政処分が行われることになる。


運営指導では、情報を集めるための権限のみが認められていて、立入検査などの強制力は無い。しかし、監査の場合はそうした強制力も認められている。監査は、人員基準違反、運営基準違反、不正請求、不正な手段による指定、高齢者虐待などがあった場合、もしくはこれらの疑いがある場合に行われる。


監査の結果、違反が確定した場合は行政処分が下される。行政処分には、「指定の効力の全部または一部停止」や「指定取り消し」などの重いものもある。介護報酬の返還請求も同時に実施される。監査対象となって行政処分を受けることは、事業者にとってまさに死活問題である。

konicaminolta-article-2024.4-lead-sp-banner01

3,始まる新年度の運営指導


毎年6月は、新年度の運営指導が本格的にスタートする月である。


役所関連は4月に人事移動がある。運営指導を担当する地方公務員の場合、異動の頻度は3年〜4年に1回が一般的であろう。これには、同じ部署を長期間担当することによる不正や汚職を防止する意味もある。そのため、地域によっては介護保険を所轄する部署の担当課長が3年程度で替わるたびに、ローカルルールが変わる問題も起こっている。


今年度の介護報酬改定は、過去最大の規模となった。それは、変更項目が過去最大という意味でもある。人員基準や運営基準はもとより、既存の加算の多くに算定要件の変更があった。


例えば、通所介護の入浴介助加算には研修要件が追加された。入浴介助に関する研修を行わずに加算算定を続けた事業所は、運営指導で返還指導を受けることになる。

体制届のルール変更も大きな改定であった。従来は、減算に該当する場合に体制届を提出した。今回からは、減算に該当しない旨の届け出を提出しないと無条件で減算対象と見なされる。


BCP、高齢者虐待の防止、介護施設の栄養マネジメントの減算などがこれに当たる。介護事業者はこうした変更を「知らなかった」では済まされない。


さらに、昨年度末で3年弱続いた“コロナ特例”も廃止された。コロナ感染などを理由とした人員の欠員は今後、無条件で人員欠如減算へとつながっていく。


いずれにしても、コンプライアンスの再確認が急務である。更には、早期に内部監査システムを構築し、運営指導を前提とした定期的なチェック体制を構築することが重要だろう。


また、年に一回程度は、外部からのチェックが入る体制も作るべきである。こうした対策により、今の運営指導急増の時期を適切に乗り切る備えをしなければならない。


Access Ranking
人気記事
介護ニュースJoint