【結城康博】自民圧勝 介護政策のゆくえ 高市旋風は追い風か、それとも逆風か
自民党が歴史的な圧勝を収めた。この大きな動きを踏まえ、今後の介護政策のゆくえを予測してみたい。【結城康博】
まずは率直な感想から。確かに今回は、事前の各社の報道などで与党の勝利が確実視されていた。しかし、これほどまでの大勝には驚いた人も多いであろう。私もそのうちのひとりだ。
◆ 利用者負担2割の拡充は?
当面、介護分野の政策で多くの注目が集まるポイントは、利用者負担2割の対象者の拡大がどう決着するかだ。政府は昨年末、結論を出す時期を2026年度中に先送りしたため、今後の動向を注視する必要がある。
私は対象者の拡大が実行されると予測する。厚生労働省はいくつかの具体案を出している(以下の表を参照)が、対象者が最も多くなる単身で年収230万円以上の所得基準が採用される可能性が高いであろう。

理由は、政治的なリスクが極めて低くなったからだ。今後、何か大きな不測の事態が起きない限り、2028年夏の参議院選挙まで国政選挙はない。そのため、高齢者に負担を求める施策を実行するハードルは低くなった。特に、高齢者の負担増に慎重な中道改革連合、共産党、れいわ新選組といったリベラル勢力の減退は、国会の論戦に大きな影響を及ぼすはずだ。
今回の選挙では、高齢者に一定の負担増を求めることは「致し方ない」と考える人が多いことが、改めて浮き彫りになったのではないだろうか。世論の関心が現役世代の負担減に集まり、そうした施策を訴える政党が議席を得ていることからも明らかだ。政界では今後、利用者負担2割の対象者の拡大も強い批判を受ける施策ではないと認識されるであろう。
高市政権は今後、社会保障や税のあり方を話し合う「国民会議」を設置する方針だ。その中で、消費税率の引き下げや給付付き税額控除の導入、社会保険料の軽減などが詳しく検討される。当然、新たな財源を確保する方策、国民の負担増も俎上に載せられる。この文脈で利用者負担2割の対象者の拡大も論じられ、与党主導で実現される可能性が高い。
◆ どうなる2027年度の報酬改定
もうひとつ、介護業界にとっての大きな焦点は2027年度に控える報酬改定のゆくえだ。
何より欠かせないのは介護従事者の更なる処遇改善で、これは政府もよく理解している。そのため、私は2027年度もプラス改定となることは間違いないと考える。
しかし、2026年度の臨時改定の上げ幅(+2.03%)を上回ることは決して容易ではない。このあたりが攻防ラインになるのではないか。介護業界は一致団結して、介護従事者の賃金をまずは全産業平均並みに引き上げること、物価高騰や人材流出にあえぐ事業所・施設を支えるべきことを、強く訴えていかなければならない。
確かに、高市政権は介護業界の人材不足の深刻さをよく分かっていると思う。しかし、乾坤一擲の大勝負に打って出て完全勝利を果たした後だけあって、引き続き十分な関心を向けてくれるのか不安だ。
今後、あらゆる業界が“高市自民”に秋波を送り、関係団体を通じて要望・陳情の列を作るであろう。介護業界もそのうちのひとつになるが、高い優先順位で扱ってもらうことは難しい。
高市首相の選挙期間中の演説を見ると、社会保障の充実よりも経済、金融、安全保障、防災、国土強靱化といった政策分野に重きを置いているように感じる。果たして介護分野に目を向けてもらえるのか。これまでも地道に働きかけを続けてきた業界団体の皆さまを引き続き応援したい。
幾ばくかの望みは、高市首相が大勝したことで積極財政が加速していくことであろう。政策の比重が財政規律より財政出動に動き、介護分野にもその影響が及ぶことを期待したい。高市首相の介護に対する個人的な思い入れも相まって、介護現場への支援が充実されていくことが良いシナリオだ。
最後に、野党の勢力がかつてないほど弱まってしまったことの影響にも触れたい。
国会では今後、昨年のように与野党の真剣な調整・駆け引きで物事が決まるプロセスは少なくなる。議論の中心は与党内に戻り、自民党などへのロビー活動が再び大きな影響力を持つようになるであろう。そのため、国民から見て議論の過程が昨年より見えにくくなる恐れがある。当然、介護分野も例外ではない。









