【天野尊明】27年度介護報酬改定、プラス濃厚か 責任ある積極財政の「責任」の読み解き方
2月8日に投開票された衆院選で、自民党が単独で定数の3分の2を上回るという歴史的勝利を収めました。【天野尊明】
厚労省関係筋に取材すると、やはりどなたも当然ながら、「選挙結果は政策に大きく反映される」と受け止めています。それを踏まえて今回は、特に2027年度の介護報酬改定などを控えるこれからを占ってみたいと思います。
◆ 警戒すべき「責任ある」の重み
まず、いろいろな立場の方がご覧になるこのコラムで、選挙結果そのものの評価を思い切ってするべきではないかもしれませんが、少なくとも国民の多くが、今の政権の安定を望んだということは確実な状況であると言えます。
高市早苗首相が解散を宣言した際、来年度予算の今年度内の成立が困難になることが問題視されましたが、これだけ圧倒的な勢力分布の下で運営される国会では、予算審議のプロセスはかなりシンプルになるでしょうから、その影響は最小限に留まるものと考えることができます。2027年度の介護報酬改定に向けた議論も、概ね例年通りに進んでいくでしょう。
現状、踏まえておかなければならないのは、高市政権の社会保障、あるいは介護分野に対するアティチュードと、2027年度の介護報酬改定に向けて既に示されている様々な方向性です。
まず、高市政権は「責任ある積極財政」を掲げています。財源の投入を求める業界側からは、この「積極財政」を歓迎する向きを強く感じるところではありますが、私たちが注視すべきはむしろ前段、「責任ある」の部分です。
自民党では、この「責任ある積極財政」を以下のように位置付けています。
「財政の持続可能性」を確保しながら、「大胆な投資」により、力強い経済成長につなげ、税収の増加を通じて、さらなる投資を可能とする「投資と成長の好循環」を生み出す。
言うまでもなく社会保障、あるいは介護分野には経済活動を下支えする機能があり、その底が抜けてしまわないように配慮すべきであることは、当然、政府も理解していると思われます。
しかしそれ以上に、上記の「財政の持続可能性」が、今日の社会保障、あるいは介護分野にとって最重要課題のひとつであるという重みが、今後を占うにあたって大きな意味を持ってきます。
実際、今回の衆院選で掲げられた自民党の公約では、社会保障について、
▷ 医療・福祉・介護分野で働く幅広い職種の方々の確実な賃上げを図ることを第一としつつ、
▷ 中・低所得者(若者・現役世代を含む)の税・社会保険料負担を軽減すること
が重点に位置付けられています。それを予見していたように、昨年末の財務相や厚生労働相などの閣僚折衝では、2027年度の介護報酬改定に向けて、以下のような文言が確認・合意されていたことを、読者の皆さまもご覧になったことと思います。
令和9年度介護報酬改定においては、介護分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保を図る必要があるとの認識のもと、「介護事業経営実態調査」等において、介護サービス事業者の経営状況等について把握した上で、物価や賃金の上昇等を適切に反映するための対応を実施する。同時に、介護保険制度の持続可能性を確保するため、介護給付の効率化・適正化に取り組む必要がある。(2025年12月24日の大臣折衝事項より引用)
簡単に言えば、改定時に毎回行う「経営実態調査」の結果を踏まえるという前提に立ちながら、介護サービス費の支出は適宜抑制していくという、実に高い財政規律意識に立った書きぶりとなっています。
さらには、前回のコラムで触れた通り、今の政権と連立を組む日本維新の会が政策の柱に掲げる社会保険料負担の軽減は、財務省の考え方とも一致しています。自民党の公約ともリンクすることを思えば、結城康博教授が指摘されている政治的リスクの低下もあって、「利用者負担2割の対象拡大」は断行に向けて一気に傾いたと言うことができますし、フリーハンドで基本報酬を引き上げるような報酬改定となることも極めて考えにくいでしょう。
◆ それでも報酬改定はプラス基調へ
一方で、「それでは次はマイナス改定になるのか」と言えば筆者もそうは思わず、これは余程のことがない限り、プラス改定が既定路線になってくるものとみています。
その理由は、「プラス改定のやり方がいくらでもある」ということにあります。政府・与党は賃上げを重視しており、これはしばらく変わらないでしょう。相応の処遇改善を前提にすれば、たとえ事業所・施設の経営改善を目的とした部分などがうっすらしたものであっても、改定率はおのずと引き上がってきます。
加えて、今年度の補助金などによる1.9万円の賃上げ支援策の内訳をみても、介護現場の生産性向上や協働化のさらなるテコ入れがあることも確実です。それだけに、2027年度の介護報酬改定は「プラスかマイナスか」ということよりも、いつも以上にその実質を問う姿勢が求められる改定になると言えるでしょう。
最後に、個人的な思いではありますが、現政権が「力強い経済成長」を強く意識したものである以上、介護分野についてもその原動力としての評価を求めていく好機なのだろうと感じています。
前述した通り、介護分野には経済活動を下支えする機能があります。そこへの投資(財源の投入)がこの国にとって意義あるものであることを、できるだけ多くの方々に伝えてまいりたいと考えています。









