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2026年4月16日

【石山麗子】包括と居宅の役割はどう変わる? 制度改正の行方と相談支援体制の今後の課題

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《 国際医療福祉大学大学院・石山麗子教授 》

今後の地域の相談支援体制はどうあるべきか。国はこれまで、検討会や審議会(社会保障審議会・介護保険部会)などを通じて議論を重ねてきました。【石山麗子】

その中で、地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の役割分担について、新たな整理の方向性を示しています。これは、4月3日に国会へ提出された介護保険法などの改正案にも反映されています。


具体的には、地域包括支援センターが「社会資源への働きかけを含めた地域全体への支援」を担い、居宅介護支援事業所が「個々の利用者に対するケアマネジメント」を中心に担う、という考え方です。


これは、これまでの現場の実践を否定するものではありません。それぞれが担ってきた役割を明確化し、より機能的にしていこうとする動きだと言えます。


今後は制度改正に向けて、具体的な中身が詰められていく段階に入ります。その際、単に理想論を語るだけでなく、「現場で何が起きているのか」「何が成果につながっているのか」といったエビデンスに基づく議論が重要になります。


こうした背景のもと、国は昨年度に調査研究を実施し、その結果が今月に公表されました。この調査結果からは、地域包括支援センターや市町村の取り組みに関して、特に次の3つの課題が明らかになっています。


① 地域課題の「見える化」が十分に進んでいないこと


市町村の多くは、地域包括支援センターから情報提供を受け、「地域課題を整理し、一覧化する役割は地域包括支援センターにある」と考えています。一方で、実際に課題を整理し、可視化まで行えている地域包括支援センターは一部にとどまっており、課題の優先順位まで整理できているケースはさらに少ない状況です。


これは、「情報を集めること」は日常的に行われていても、その情報を地域全体の視点で整理し、意味のある形にまとめ直すところまで至っていないことを示しています。せっかくの相談対応や会議の積み重ねが、将来の地域づくりにつながる形になっていない可能性があると言えるでしょう。


② 地域活動のPDCAが回りきっていないこと


地域ケア会議や地域活動について、「評価までは行っているが、その結果を踏まえて活動計画の見直しや修正までつなげられていない」という課題も浮かび上がっています。


個別ケースを検討する場としての会議は実施されていても、その気づきが「地域として次に何をするのか」「どの施策につなげるのか」といったところまで整理されず、会議が事例検討で終わってしまっているケースも少なくありません。個別支援と地域づくりをどうつなぐのかが、改めて問われています。


③ 業務量の多さが資源開発の妨げになっていること


地域ケア会議などを通じて課題が見えてきても、それを受けた資源開発や仕組みづくりに十分取り組めていない最大の理由として、多くの地域包括支援センターが「職員の業務量過多・人員不足」をあげています。


日々の相談対応やケース支援で手一杯の中で、地域資源を生み出すところまで踏み出す余力がない、というのが現場の実感ではないでしょうか。しかし、担い手がさらに減っていくことが予想される中で、今後は限られた人員でも取り組める方法を意識的に共有していくことが不可欠になります。

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◆ これから現場に求められる役割とは


調査結果では、地域課題の解決に実際につながっている地域ほど、


・課題を一覧化して整理している
・複数ある課題に優先順位をつけている
・評価指標を考え、振り返りを行っている


といった取り組みを丁寧に行っていることが分かりました。単に情報を集めるだけでなく、「整理する」「共有する」「振り返る」という一手間が、成果の差につながっていると言えます。


今後、地域包括支援センターと市町村には、個別の困難事例への対応(ミクロの視点)を出発点に、それらを地域全体の課題として整理し、施策や仕組み(マクロの視点)につなげていく役割が、より一層求められます。


地域包括支援センターも、居宅介護支援事業所も、余裕のある状態ではありません。だからこそ、「何のためにこの業務をしているのか」「この取り組みがどこにつながるのか」が見える仕組みがなければ、成果が見えにくい業務は後回しにされてしまいます。


互いの役割を整理し、情報を共有しながら連携を強めていくこと。これが現場の負担を軽減するだけでなく、一人ひとりの高齢者を支える地域包括ケアシステムを持続可能なものにしていくための重要な鍵となります。


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