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2026年5月18日

【障害福祉】臨時改定の衝撃。報酬引き下げの深層と時代の転換=介事連・中川氏

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《 全国介護事業者連盟・障害福祉事業部会の中川亮会長 》

今年度の報酬改定で障害福祉の業界を激震させた一部サービスの基本報酬の引き下げ。先行する他産業の賃上げや物価高に現場が苦しむなか、この決定は事業者団体にも大きな衝撃を与えたようだ。


全国介護事業者連盟・障害福祉事業部会の中川亮会長に話を聞いた。


関係者との折衝の経緯、来年度の報酬改定に向けた課題、そして現場に求められる「質的な転換」。逆風を変革の力とし、激変する業界の未来図を読み解く。インタビューの主な一問一答は以下の通り。【Joint編集部】


◆ プロセスなきマイナス改定の衝撃


  ーー 今年度の報酬改定では、一部サービスの基本報酬が引き下げられました。この結果をどう受け止めていますか?

《 全国介護事業者連盟・障害福祉事業部会の中川亮会長 》

我々にとっても衝撃でした。率直に申し上げて、その決定プロセスに強い違和感を覚えています。


本来、報酬改定の議論は精緻な経営実態調査の結果などに基づいて、建設的な対話のなかで進められるべきものです。しかし今回は、そうした十分な調査が必ずしも行われていない状況下で、一部の限られたデータをもとに「総費用が膨らんでいるから下げる」という結論が先行していました。


これは強引な進め方と言わざるを得ず、事業者団体として到底納得できるものではありません。


  ーー 報酬改定のプロセスで、関係機関とはどのような調整が行われたのでしょうか?


詳細までは申し上げられませんが…。報酬の引き下げが発表される前に、政府サイドから業界へ十分な相談や説明、根回しがあったとは認識していません。


現場の関係者の間では、今年度の予算編成をめぐる議論が大詰めを迎えていた昨年末頃に、財政面から圧力がかかったという見方が出ています。職員の賃上げや物価高への対策などで支出が膨らむなか、政府は費用の抑制につながる施策をどこかで講じなければならなかったという見方もあります。


障害福祉の総費用が急激に増加し、提供されるサービスの質についても様々な課題が指摘されているなかで、一部サービスが適正化の対象として狙い撃ちされてしまった。現場ではそう受け止めている人が少なくないのではないでしょうか。

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  ーー 報酬引き下げの話を受けて、どのようなアクションを起こしましたか?


我々としては当然、政府・与党の関係者に対するロビー活動を直ちに展開しました。予算編成の厳しい局面で、我々の主張に耳を傾けて真摯に検討してくださった関係者の皆様には、深く感謝しています。


そうした多くの方々の尽力もあり、最終的には重度者らにサービスを提供する事業所に対する配慮措置の導入など、一定の激変緩和策を組み込むことができました。報酬の引き下げ自体は不本意ですが、我々が具体的な対案を持って粘り強く働きかけた結果として、一定の成果は得られたと思っています。


◆ 曲がり角を迎えた業界


  ーー 来年度の報酬改定でも、費用の抑制を求める財政当局から強い圧力がかかりそうです。

《 全国介護事業者連盟・障害福祉事業部会の中川亮会長 》

各方面との意見交換はすでに始まっています。政府サイドには、これまで以上に丁寧に議論を進めていくよう強く要請しており、業界との相談・調整も欠かさないよう求め続けています。今度こそ必ず、現場の実態を反映した納得感のある報酬改定としていただきたいと思っています。


  ーー 来年度の報酬改定に向けては、具体的にどのようなことを求めていきますか?


まず第一に、職員の十分な賃上げの実現、そして物価高などの影響を反映させた基本報酬の引き上げを強く求めていきます。その上で、質の高いサービスの提供のために努力している事業者が、正当に報われる内容にすべきと強く要請していきます。


確かに、事業者サイドにも制度の理解不足など一定の課題があることは否めません。例えば、コロナ禍を契機に設けられた特例を都合よく解釈して、十分な支援実態もないのに「在宅支援」として多くの報酬を請求するような事業者の存在が、業界の信頼や健全性を損なっています。


ですが、利用者と真摯に向き合って障害福祉の現場を懸命に支えている人たちが、それで一律に不利益を被るようなことがあってはなりません。実際はそうした現場が大半で、民間の営利法人でも高い志で取り組んでいる事業所はたくさんあります。


そうした実態をしっかりと捉え、一部の偏ったデータのみを見て判断を下すことなく、十分なエビデンスに基づいた丁寧な議論を尽くしていただきたいと考えています。我々も業界に一定の課題があることは認めています。ただ、その是正のために健全な現場にも打撃を与えることは認められません。

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  ーー 業界には課題もある、とのことですが、これから障害福祉の現場にはどんなことが求められると思いますか?


今、我々は曲がり角に立っているのではないでしょうか。地域のサービスを量的に確保すればいいという時代から、そのサービスの質が厳しく問われる時代へと移行する真っ只中にあると思っています。


国は現在、例えば就労継続支援やグループホームの適切な運営に関するガイドライン、各種通知などを相次いで発出しています。我々には今後、こうした時代の要請に向き合って社会の期待に応えていくことが、これまで以上に強く求められるようになるでしょう。


もう一つ重要な要素は、ICTやAIなどのテクノロジーを積極的に活用していくことです。これはもはや、「やっておいたほうがいいこと」ではなくなりました。事業所が生き残るための「最低条件」になったと捉えるべきです。


人口減少の加速など環境が激変するなかで、古き良き牧歌的な時代が終わりを迎えつつあります。我々に求められるのは、テクノロジーをうまく使って次の良い時代のスタンダードを築くことではないでしょうか。


国も生産性向上の推進に明確に舵を切っており、事業所の意識改革は必須です。変化を恐れず、利用者から真に選ばれる質の高い支援を持続可能な形で実現することで、この仕事に携わる全員が誇りを持てる業界を共に作っていきましょう。


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