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2026年6月9日

【壷内令子】身寄りのない高齢者の支援、介護報酬の評価も必要 ケアマネの不可避の隙間業務に光を

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《 株式会社ウェルネス香川・壷内令子代表取締役 》

近年、身寄りのない高齢者への支援が地域の大きな課題となっています。【壷内令子】

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政府も動き始めています。今年4月には、頼れる身寄りがいない高齢者らに対し、日常生活支援、入院・入所の手続き支援、死後事務支援などを行う事業を第二種社会福祉事業に位置づける法案を閣議決定しました。


また、すでに民間では「高齢者等終身サポート事業」として身元保証や死後事務、日常生活支援などを行うサービスも広がっています。こうした仕組みが整っていくことは、地域にとって大きな前進だと感じます。


一方で、居宅介護支援のケアマネジャーとして現場を担う立場から見ると、制度や事業が用意されれば、それだけですぐに支援が動き出すわけではありません。必要な支援にたどり着くまでには、いくつもの小さな壁があります。


◆ 支援につながるまでの「隙間」


ケアマネジャーが本人の状況を把握し、必要なサービスや関係機関につなぐことは、本来のケアマネジメント業務です。ただ、身寄りのない高齢者の場合、その「つなぐ」までの過程で壁にぶつかることがあります。


たとえば、高齢者等終身サポート事業や保険外サービスがあっても、本人があらかじめ契約しているとは限りません。むしろ、何も起きていない段階から費用をかけて契約している方は少ないのではないでしょうか。


「まだ自分でできる」「今はお金をかけたくない」「そこまで困っていない」。そう思っている間は、なかなか契約にはつながりません。


一方で、経済的に余裕がない方の場合は、有償の保険外サービスを利用すること自体が難しい場合があります。低額または無償で利用できる仕組みが整っていくことは大切ですが、そこにつながるまでにも、本人の状況整理や対象確認、関係機関との調整が必要になります。


つまり、経済的に一定の余裕がある方には「今はまだ契約したくない」という壁があり、経済的に余裕がない方には「有償サービスを使えない」という壁があります。どちらの場合も、必要な支援にすぐつながるとは限らないのが実情です。


しかし、入院や急変、生活上の困りごとは突然起こります。そのときには、まず目の前の課題に待ったなしで対応し、そのうえで必要な支援や事業につなげていくことにならざるを得ません。


◆ 身寄りの有無で、現場の負担は変わる


身寄りのある高齢者であれば、書類の確認、入院時の手続き、支払いの確認、急な連絡への対応などを、家族や親族に相談できる場面があります。


もちろん、家族がいるからといってすべてがスムーズに進むわけではありません。それぞれ事情があり、迅速な支援が難しい場合も多々あります。それでも、頼れる家族や支援者がいる場合と、まったく頼れる人がいない場合とでは、現場で発生する確認や調整の量は大きく異なります。


頼れる身寄りがいない方の場合、ちょっとした書類の確認、代読・代筆、支払い状況の確認、入院時の細かな手続きなどを担う人がいません。一つひとつは小さな対応であっても、それが少しずつ積み重なっていきます。


身寄りのある高齢者と身寄りのない高齢者とでは、同じ出来事が起きても、ケアマネジャーに求められる対応量や調整の難しさが大きく異なる ーー 。ここに、現場として感じる重い課題があります。


この小さな対応の積み重ねが、ケアマネジャーにとって、いわゆる「シャドーワーク」と感じられる部分ではないでしょうか。

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◆「つなぐこと」は本来業務、しかしそれだけではない


ケアマネジャーがインフォーマルな支援や地域の社会資源を把握し、必要に応じてつなぐことは重要な役割です。しかし、身寄りのない高齢者の場合、課題は「つなぐこと」だけではありません。


本来であれば保険外サービスとして対応したり、他機関につないだりすべき業務であっても、すぐに適切な支援につながるとは限りません。費用の問題、本人の理解、契約の難しさ、地域資源の不足、そして緊急性が重なると、支援が動き出すまでに時間がかかります。


そのため、身寄りのある高齢者と比べて身寄りのない高齢者では、支援につながるまでの間に、ケアマネジャーが動かざるを得ない場面が多くなりがちです。この差を、すべて基本の居宅介護支援費の中に含めて考えてよいのか。ここに問題意識を持っています。


◆ 自費サービスで対応すればよいのか


こうした業務について、「保険外サービスとして、居宅介護支援事業所が自費で対応すればよいのではないか」という考え方もあるかもしれません。しかし、それも現場では簡単ではありません。


身寄りのない高齢者に生じる隙間の対応は、定期的・計画的なサービスではなく、突発的に発生することが多いのが実情です。内容も一定ではありません。その都度、契約し、料金を設定し、説明し、請求し、記録する仕組みを整えることは、事業所にとって大きな負担になります。


また、ケアマネジャーが保険外サービスの提供者になってしまうと、ケアマネジメントの中立性や役割の明確化という点でも課題が生じます。


さらに、ケアマネジャーの人材不足が課題となっている中で、限られたケアマネジャーの時間を保険外サービスの提供に振り向けてしまえば、本来必要とされているケアマネジメントそのものに使える時間が削られてしまうでしょう。


これらを踏まえると、「居宅介護支援事業所が自費サービスとして対応すればよい」という整理だけでは、現場の課題は解決しにくいのではないでしょうか。


◆ 現代に合った評価のあり方を


かつて、居宅介護支援には認知症加算や独居高齢者加算がありましたが、2015年度の介護報酬改定で基本報酬に包括化されました。もちろん、当時の加算をそのまま戻せばよいという話ではありません。


現在の課題は、単に独り暮らしかどうかだけでは捉えきれません。頼れる身寄りがない状態では、支援につながるまでの間に小さな対応が積み重なりやすく、現場のケアマネジャーがそれを「シャドーワーク」と認識していることです。


特に、身寄りがないことに認知症が重なる場合は、本人の理解、同意、契約、金銭管理、緊急時対応などの難易度が一段高くなります。


そのため、現在の社会背景に合わせて、「身寄りのない高齢者支援」に対する加算などの評価を検討してもよいのではないでしょうか。


身寄りのない高齢者を地域で支える仕組みを進めていくのであれば、その入り口でケアマネジャーが担っている隙間の対応にも、何らかの評価が必要ではないかと感じます。小さな対応の積み重ねを、個々のケアマネジャーの責任感や善意だけに委ね続けることは、持続可能とはいえません。


国が身寄りのない高齢者に対する支援の仕組みを整えようとしている今だからこそ、現場でその支援につなぐ役割を担っているケアマネジャーの業務についても、あわせて考えていく時期に来ているのではないでしょうか。


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