第一法規 介護ネットシリーズ案内バナー
2026年10月21日

【画期的】居宅介護支援の特定事業所加算、要件緩和が変える経営の姿|田中紘太

このエントリーをはてなブックマークに追加
《 株式会社マロー・サウンズ・カンパニー|田中紘太代表 》

厚生労働省は19日の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で、居宅介護支援の特定事業所加算の見直しを提案しました。強い反対意見は出ず、施策の方向性が大筋で確認されたと報じられています。私は、現場の実態を踏まえた大きな前進だと受け止めています。【田中紘太】

介護労働安定センター 案内バナー

特に注目すべきは、加算Ⅰの「要介護3以上の利用者が40%以上」という要件の撤廃です。


以前から現場では評判が悪く、私も見直しを求めてきました。多くのケアマネジャーが待ち望んだ、画期的な変更だと考えています。


◆ 利用者のためになっていたか


自宅など地域で生活を続けている利用者を幅広く受け入れると、必然的に要介護1、2の方も多くなります。主任ケアマネジャーらを手厚く配置しても、40%以上という重度者の割合を満たすことができず、加算Ⅰを取れない事業所も多くありました。


また、この要件は、要介護3以上の利用者が多い集合住宅を中心にサービスを提供する事業所を、より有利にする仕組みとして機能していた面もあります。


居宅介護支援の事業者はこれまで、往々にして


● 40%以上を維持するために軽度者の受け入れを控える
● 集合住宅の利用者を中心とするビジネスモデルを選択する
● 事業所を2つに分け、要介護度に応じて利用者を振り分ける


といった経営判断をしてきました。しかし、これらはいずれもケアマネジメントの質の向上に直接つながる対応ではありません。


国の調査結果でも、要介護度の軽重によってケアマネジャーの業務時間に大きな差はないと報告されています。私の実感でも、業務時間を左右するのは利用するサービスの数や連絡調整の多さです。


もちろん、重度者を支えることは重要です。ただ、その割合を維持することで事業所の収入が増える仕組みは、自立支援という介護保険の理念ともかみ合いません。


利用者の要介護度の構成より、地域の相談を受け止める手厚い人員体制などに評価の重点を置く方向を、私は強く支持します。

monakayaの特集記事のご案内

◆ 負担軽減と丸投げの境界


あわせて歓迎したいのが、24時間の連絡体制に関する要件の緩和です。厚労省は今回、現在は加算Aでのみ認めている他事業所などとの連携を、上位区分にも認める案を示しました。


複数の事業所で電話対応を集約したり、当番を分担したりできれば、個々のケアマネジャーが時間外も相談を受ける負担を減らせます。これは意義の大きな緩和です。


一方で、現場の実情も利用者の状況も知らない外部の事業者に、電話対応をすべて丸投げするような仕組みを認めることについては、より慎重に検討すべきではないでしょうか。いつも連絡がつく。それだけでは不十分です。相談内容を的確に捉え、臨機応変に必要な支援につなげられることが重要です。


厚労省の提案では、連携を認める対象が「他事業所など」となっています。この範囲にどこまでを含めるのか、情報共有や対応の責任をどうするのか。具体的な運用ルールの整備にあたっては、利用者を守る視点を忘れないでほしいと思います。


◆ 大規模化を後押しする見直し


このほか、厚労省は算定事業所が少ないことなどを理由に、加算Aを1年間の経過措置を設けたうえで廃止することを提案しました。他事業所などとの連携の拡大とあわせて、上位区分への移行を促す施策といえます。


また、保険外の生活支援サービスなどをケアプランに位置付けるよう求める現行の要件について、地域の多様な主体との「連携体制の構築」を求める内容に改める案も示されました。


身寄りのない高齢者の支援など、介護保険だけでは完結しにくい地域課題への対応は極めて重要です。何をもって「連携体制の構築」と評価されるのか。ここが非常に重要で、事業者は今後明らかになる具体的な運用ルールを確認しなければいけません。

介護経営学会 特集記事

今回の見直しで、私たちの業界では主任ケアマネジャーらを増員して加算Ⅰを目指す動きが強まるでしょう。事業所の大規模化という既存の流れが、一段と加速すると考えます。


大規模化には、経営効率が高まるほか、職員の急な不在時にも支援を継続できる体制を作りやすくなるなど、様々な利点があります。


厚労省は事業所の大規模化を後押ししています。今回の一連の提案を見ても、1人、2人といった小規模な事業所への恩恵は限られるように見受けられます。こうした潮流に取り残されると、経営環境は一段と厳しくなるのではないでしょうか。


もちろん、まだ基本報酬や特定事業所加算の単位数、具体的な運用ルールなどは未確定です。増収への期待だけを先行させることなく、事業者は今こそ物事の本質に目を向けるべきです。


利用者を安定して支えられ、ケアマネジャーが安心して無理なく働き続けられる体制・環境を整える。それこそが、居宅介護支援の経営の王道ではないでしょうか。


Access Ranking
人気記事
介護ニュースJoint