2023年3月6日

【小濱道博】介護支援専門員には一層の研鑽が求められる 法定研修改定から見えるケアマネジメントの未来

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《 小濱介護経営事務所:小濱道博代表 》

2024年度からケアマネジャーの法定研修が改正となる。根拠のある支援の組み立てが求められ、その基盤として「適切なケアマネジメント手法」や科学的介護(LIFE)などを学ぶ内容が組まれていく。【小濱道博】

LIFEについては2024年度の介護報酬改定で、居宅介護支援への加算が創設されることがほぼ確実な状況になっている。


今後は、LIFEへのケアプランの提出とともに、PDCAサイクルの推進が求められるのではないか。例えばサービス担当者会議などで、担当事業所ごとの利用者別フィードバック票を共有して検討し、必要に応じてケアプランに反映する、といったことが想定される。


その場合、LIFEの活用を行っていない担当事業所が取り残される可能性も出てくる。いずれにしても、今後は根拠のある支援が求められ、そのエビデンスの1つとしてのLIFEの位置付けが強化されることは間違いない。

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また新たな法定研修では、終末期ケアを含めた生活の継続を支える基本的なマネジメント、疾患別マネジメントの理解として、心疾患、誤嚥性肺炎などの科目が新設されている。従来のターミナルケアの科目は、「終末期ケア」に統合されることとなる。


国が進める「地域共生社会の実現」と「地域包括ケアシステムの推進」の目的の1つが、重度化してもすぐに介護施設へ入所させることなく、在宅ケアや在宅看取りを可能な限り提供していくことにある。そのために、在宅医療と在宅介護が中心となった医療・介護連携が求められる。


この中で、以前から指摘されている問題点として、ケアマネジャーの医療的知識の不足がある。今回の改正では、この医療的知識の習得に力点が置かれていることは間違いない。

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また、制度・政策、社会資源などについての近年の動向を反映する観点から、地域共生社会、認知症施策大綱、ヤングケアラー、仕事と介護の両立、科学的介護、身寄りがない人への対応、意思決定支援なども新たに盛り込まれる。


近年、特に注目されているヤングケアラーや仕事と介護の両立の問題も、ケアプラン作成において重要な課題となっている。今後はより、家族の抱える諸問題に寄り添ったアセスメントやプランニングが求められるだろう。


そして、各研修で受講時間が増やされて強化された科目が、職業倫理についての視点である。


地域共生社会、科学的介護などの文脈で、エビデンス重視の指向が打ち出されているが、介護は医療と異なり、単にアウトカムだけを求めているわけではない。介護は本来、家族が行うべきものである。介護サービスはもともと、介護者が自分の時間を持ってリフレッシュするまでを補完するレスパイトとしての機能が目的だ。いわゆる共助である。介護とは何か、ケアマネジャーの役割とは何か、を見失ってはいけないということであろう。


継続研修においては、必要な理念や考え方について理解しており、その理念や考え方について自分の言葉で具体的に説明できるレベルが修得目標とされた。このレベルに達するためには、表面的な理解だけでは不可能だ。必要十分以上の学びと解釈ができて初めて達することができる。ケアマネジャーには今まで以上の研鑽が求められるということだ。

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ケアマネジャーのなり手が減少を続けて、全サービス中、圧倒的に平均年齢の高い居宅介護支援事業所に、LIFE、ICT化、医療知識といった新たなスキルの修得を求める今回の法定研修改定 − 。現場レベルでどこまで対応できるのか、という不安も聞こえてくる。


確かに、ケアマネジャーとしてのスキルアップも重要であるが、ケアマネジャーという職種の魅力度を上げて、ケアマネジャーを目指す人を増やしていくことも重要な課題である。このあたりは、国と介護支援専門員協会などが協働して取り組んでいくべきポイントであろう。


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