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2026年10月5日

【深層対談】介護AIの過熱PRに警鐘 「何でもできる」と煽らない誠実さと協調が生む力 NDソフト×BOS|後編

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《 NDソフト 松山庸哉社長(右)とブルーオーシャンシステム 寺岡正人社長(左)》

AIはいま何ができて、何がまだできないのか。期待が高まる局面だからこそ、ベンダーには冷静で誠実な情報発信が求められる。【Joint編集部】


可能性ばかりが強調されれば、やがてAIそのものへの不信を招きかねない。

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エヌ・デーソフトウェアの松山庸哉社長と、ブルーオーシャンシステムの寺岡正人社長。本来は競合関係にある2人の対談の後編だ。これから何を競い、どこで手を取り合うのか。適切な情報発信から競争と協調、介護業界に対する使命まで、話は核心へ進んでいった。


▶ 前編の「介護AIに何を任すか 問われる人の役割と責任」はこちら


【PROFILE】

エヌ・デーソフトウェア株式会社 松山庸哉代表取締役社長。介護福祉士、社会福祉士、介護支援専門員の資格を持ち、介護職員、現場リーダー、施設長、エリア本部長、介護サービス法人役員を歴任。現場から経営まで一貫して介護に携わり、介護現場の課題解決、人材育成、DX推進を通じて、介護・福祉業界の発展に挑戦している。

株式会社ブルーオーシャンシステム 寺岡正人代表取締役。1991年より介護・障がい福祉分野の研究開発に従事し、厚生省研究事業に多数参画。ニューメディア開発協会主催メロー・ソサイアティーグランプリ受賞、AI分野の特許を先駆けて取得。1993年以降は特養のOA化研究事業に携わり、記録システムの開発で業界を牽引。1995年に富士ロジテックデータシステム(現ケアコネクトジャパン)へ転籍後、取締役開発部長、統括部長を歴任して業界の基盤構築に貢献。2010年に株式会社ブルーオーシャンシステムを設立し、介護現場に根ざした技術革新を推進。


◆ 誠実な情報発信を

《 NDソフト 松山庸哉社長(右)とブルーオーシャンシステム 寺岡正人社長(左)》

寺岡:いまはまだAIの黎明期です。ガートナーの「ハイプ・サイクル(*)」に沿うように、これから期待はさらに高まるでしょう。「AIはすごい」「何でもできる」という空気がより強まる可能性があります。

*ハイプ・サイクル
新しい技術が登場して社会に定着するまでの過程を、「黎明期」「過度な期待のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「生産性の安定期」の5段階で捉える考え方。

黎明期には、そのテクノロジーの可能性や理想、夢を語ることに意味があります。ただ、それを強調し過ぎて「過度な期待のピーク期」がより強烈になると、その後の「幻滅期」の谷が深くなってしまう。


「やっぱりAIは使えない」という落胆が広がり、せっかくの技術の普及を遠ざけてしまいます。ベンダーの信頼は失墜し、行き詰まる会社も出てくるでしょう。たった1社の失敗が、AIツール全体への不信を招く可能性も否定できません。


だからこそ、各社の情報の出し方が非常に重要となります。


松山:AIに対する期待が大きいからこそ、私たちベンダーには大きな責任があると思います。


明るい展望を語ることも大切です。でも、将来できるかもしれないことと、今日できることは全く違います。未来の姿を、いま既に実現しているかのように伝えてはいけません。介護現場を混乱させないよう、正確な情報を真摯に届けていく姿勢が不可欠です。


◆ 競争と協調の境界線

《 ブルーオーシャンシステム 寺岡正人社長 》

寺岡:これから市場が大きくなれば、競争もさらに激しくなるでしょう。「うちのAIが一番すごい」「他社ができることは全部できる」といったPRが増える可能性もあります。


そういう時ほど、できることとできないことを明確に示さなければいけません。実際には一部しかできないのに、「すべて簡単にできます」と言えば信頼を失います。


松山:これからのベンダーには、誠実さがますます求められると思います。可能性や期待だけでなく、今の限界点や注意点もきちんと伝えていく。そうしたコミュニケーションが、結果的に業界全体の信頼を守ることにつながるでしょう。


寺岡:今後は競争の物差しも変わっていくと思います。


AIが賢い、早い、多機能といった要素だけでなく、いかに安全か、信頼できるか、説明可能かといった要素がより問われることになるでしょう。繰り返しになりますが、目的はAIを使うことではなく介護現場の課題を解決することです。

介護施設の集客・情報発信に関するカンリー特集記事

松山:何でも競争すればいいというわけではありませんね。競い合うところは競い合う一方で、一緒に進めた方が介護現場のためになるところは協力していく。そうした切り分けが必要だと思います。


その一例が、AIを組み込んだ業務プロセスに人がどう介入すべきか、どのレベルのセキュリティを確実に担保すべきか、といった考え方の整理ですね。業界で一定の理解を共有することも必要になるでしょう。


寺岡:そうですね。一定の業界標準、共通認識のもとで、ベンダーが技術やサービスを競う形が理想でしょう。このあたり、国の議論の進展にも期待したいところです。


◆ 使命が業界を前進させる

《 NDソフト 松山庸哉社長 》

松山:言うまでもなく競争は大切です。ただ、私たちが本当に向き合うべきは競合他社ではなく、介護現場の課題です。それは1社だけではとても解決できません。


寺岡:各社の得意分野や強みをつないで、価値を高めるという発想も大切でしょう。AIに限らず、ベンダーが手を取り合えるところは少なからずあると思います。


松山:そもそも介護の主役は、洗練されたシステムでも高度なAIでもありません。利用者さんと、その暮らしを支える職員です。


介護DXの本当の目的も、単に業務を効率化することではありません。利用者中心、職員中心の環境をつくり、より良い介護を実現することです。プロダクトを作る時も、情報を発信する時も、そこを見失ってはいけないと思います。


寺岡:本当にそうですね。介護業界で働く以上、ベンダーは競合であると同時に仲間でもあります。


AIの活用標準やセキュリティ、データ連携など、業界全体で共に考えるべきことは多くあります。そうした領域では、一緒に取り組んでいきたいですね。


松山:競争は技術を進化させますが、使命は業界を前進させます。介護現場のためになることであれば、そこはしっかり協力すべきだと思います。


◆ 変わることと変わらないこと

《 NDソフト 松山庸哉社長(右)とブルーオーシャンシステム 寺岡正人社長(左)》

寺岡:私が介護現場向けのシステム開発に関わり始めた原点は、記録に追われる現場を見て「テクノロジーの力で何とかできないか」と思ったことでした。


いまはAIという強力なツールもありますが、目的は変わりません。介護は人が人を支える仕事です。その時間を少しでも増やすために技術を使う。AIもあくまで、その選択肢の1つだと思っています。


松山:テクノロジーはこれからも進化していくでしょう。でも、AIがどれだけ賢くなっても、最後に人を幸せにするのは人です。


私はいまベンダーの経営者ですが、職員として介護現場に立っていた時と目指すことは変わっていません。介護に関わるすべての人が、明日に希望を持てる業界をつくっていきたいと思います。


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