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2022年10月25日

【まとめ】“要介護1と2の保険外し”とは何か なぜ論点になっているのか

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《 通所介護事業所の様子 》

介護サービスの利用者や事業者、専門職らが強く反発し、Twitterでも一時トレンド入りした「#要介護1と2の保険外し」− 。具体的にどんな内容なのか、なぜ論点になっているのか、何が問題視されているのか、改めてまとめた。【Joint編集部】

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◆ 財務省の目的は何か?


「要介護1と2の保険外し」は、要介護1と2の高齢者に対する訪問介護、通所介護を市町村が運営する「総合事業」へ移管する構想を指す。介護保険の見直し案の1つだ。政府は現在、次の2024年度の制度改正で実行すべきか否かを検討している。結論は年内に出す。


実現を強く働きかけているのは財務省。狙いは右肩上がりの介護費の伸びを抑え、保険料など現役世代の負担を軽くすることにある。


介護費は足元の昨年度で約11兆円。急速な高齢化を背景として、2040年度にはおよそ25兆円まで膨らむと推計されている


このまま何もしなければ現役世代の負担も過重になり、制度を維持できなくなってしまう − 。財務省の問題意識だ。こうした危機感を共有する保険者、企業、健保組合などの関係者の中にも、「要介護1と2の保険外し」に理解を示す人がいる。


◆ 行政がコントロールしやすい仕組み


なぜ、「要介護1と2の保険外し」が介護費の抑制につながるのか。ポイントは「総合事業」にある。


この「総合事業」は、全国の市町村が介護保険の財源で高齢者の介護予防や生活支援、相談対応などを展開する「地域支援事業」のメニューの1つ(*)。現在は要支援の高齢者への訪問、通所、見守りなどがこのスキームで提供されている。


* 介護保険制度の中の「地域支援事業」の中の「総合事業」、という位置付け。


「総合事業」の特徴は、運営する市町村が地域の実情に応じてサービスの運営基準や報酬などを独自に決められる点。全国一律のルールに基づく介護給付とは、ここが大きく異なる。


例えば、地域の住民やボランティアを担い手とするなど人員配置を緩和しつつ、それに見合った低い報酬を設定することも可能。試行錯誤でコストパフォーマンスを高める余地が大きく、財政的に行政のコントロールがききやすい仕組みになっている。


あわせて、国が高齢者人口の伸び率などに合わせて「総合事業」の上限額を定めていることも重要だ。個々の市町村はできるだけ、その範囲内に支出を留めていく努力をしている。全国一律の介護給付には、こうした費用の上限管理の仕組みがない。財務省が要介護1と2の訪問介護、通所介護を移したい理由はここにある。

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◆「総合事業」も介護保険の枠内


もちろん、「総合事業」のメリットは財政面だけではない。地域の多様な資源・人材を有効に活かす取り組みができたり、現場の創意工夫でより効率的な体制を作れたりすることがあげられる。


要支援の高齢者は状態が相対的に軽く、抱えている支援ニーズの個人差も大きい。硬直的で融通のきかない仕組みより、各地域の判断で多様なサービスを柔軟に提供できる仕組みの方がフィットする、という理念がベースにある。


全国一律の「給付」と市町村の裁量が大きい「事業」があり、「事業」には費用の上限管理のルールも設けられている − 。こう整理すれば分かりやすい。


なお、「総合事業」も公費や保険料を財源とする介護保険の枠内の仕組みだ。仮に要介護1と2の訪問介護、通所介護が移されたとしても、それは利用者を公的保険の外の荒野へ放り出す制度改正ではない。その意味で“保険外し”はやや大袈裟な言い方だが、現場の関係者がそれだけ強く反発することには理由がある。

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◆「サービスの担い手がいなくなる」


「要介護1と2の保険外し」をめぐり、指摘されてる課題は大きく2つある。まずはサービスの質の維持だ。


要介護1と2の高齢者を“軽度者”と見なすのは、やはり早計と言うほかない。ADLが自立している人も多い要支援の高齢者とは違う。進行した認知症を伴うケースも少なからずある。


このため現場の関係者の間では、在宅生活の継続には専門的なサービスが欠かせないという意見が根強い。厚生労働省の審議会でも委員から、「ボランティアの活用など人員配置を緩和した体制では弱い」「かえって重度化を招く」「自立支援の考え方に逆行する」といった批判が続出している。


もう1つはサービスの担い手の確保だ。「総合事業」はサービスへの報酬が安く抑えられやすく、今もコミットしている事業者、住民らが必ずしも十分な量に至っていない。これを要介護1と2訪問介護、通所介護にも広げれば、ただでさえ経営的に苦しい事業者が致命的な打撃を受けるとの見方が大勢だ。


事業者や専門職で組織する8団体は国への要望書で、「介護職の継続的な処遇改善を困難にするばかりか、事業者は採算が取れず経営不振で撤退することもあり得る。その結果、要介護者の在宅生活を支えるサービスの担い手が地域からいなくなる」と問題を提起。「そのしわ寄せが家族介護の負担増となり、介護離職など更なる問題につながる」「地域包括ケアシステムの推進と正反対の結果を招く」などと厳しく批判している。


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