【青柳直樹】オンライン診療は皮膚科から “まず診せる”が生み出す介護施設の好循環


介護施設では今日も、職員の業務負担を軽減して利用者のケアの質を高める取り組みが重ねられています。【青柳直樹】
その手段の1つとして、オンライン診療の活用が注目されるようになってきました。これは決して敬遠すべきものではなく、むしろ積極的に取り入れることで多くのメリットが得られる施策です。国もその有効性に着目し、近年は活用の促進を呼びかけるようになりましたが、実際の導入はまだ限定的です。

青柳直樹|医師。2017年にドクターメイト株式会社を創設。日本ケアテック協会の理事も務める。介護施設が直面する医療課題に対応すべく、オンラインの医療相談や夜間のオンコール代行などのサービスを展開中。介護職の負担を減らすこと、利用者の不要な重症化、入院を減らすことなどに注力している。
◆ 皮膚科に強み 高い親和性
オンライン診療は診療科の選定が成否を分けます。画像で状態を把握できる皮膚科、生活環境の観察が効果的な精神科は、介護施設との相性が極めて良い分野です。特に皮膚トラブルは施設で頻発し、放置すれば重症化しやすいため、迅速な対応が求められます。
今回は、オンライン診療の親和性が特に高い皮膚科領域の可能性と課題を整理していこうと思います。
施設で多く見られる皮膚トラブルは主に3つです。1つ目は湿疹や乾燥による赤み・かゆみ、2つ目は水虫などの真菌感染症、そして3つ目は褥瘡。いずれも早期発見・早期対応が治療のカギであり、オンラインでの診察と薬の処方だけで改善できるケースも少なくありません。
◆ オンライン診療の強みと注意点
オンライン診療の利点は明確です。医師に画像で皮膚の状態を見せて、その場で薬の処方が可能。必要があれば2〜3日後に再度診察もでき、対面診療より手厚いフォローを受けられます。
送迎など通院にかかる負担も減り、スタッフの生産性も向上します。目に見える症状の改善は、利用者や家族の満足感にもつながるでしょう。
ただし、万能ではありません。処置や検査が必要な症状には限界があります。そのため、対面対応ができる医療機関との連携が前提となります。また、服薬や既往歴といった情報を事前に共有し、診療の精度を補完する取り組みも必要です。
まずはオンラインで診てもらい、必要なら対面へ。こうした運用が理想でしょう。早めに診察してもらい、適切な対応を決めるだけで現場の負担は大幅に軽減されます。
◆ 黎明期の今から一歩ずつ
現在、オンライン診療を導入している介護施設はごく一部にとどまります。認知度は高まってきたものの、今はまだ黎明期で活用が進んでいるとは言えません。
ただ、かつては普及が進まなかったインカムや見守りセンサーなどが今では多く使われているように、遅かれ早かれオンライン診療も標準装備となる日が来るでしょう。
ポイントは、導入時の成功体験を職員間で共有し、徐々に活用の幅を広げていくことです。「赤みが出た」「かゆみを訴えている」。そんな時にまず、オンラインで相談できるという選択肢があれば、通院同行も含めた職員の業務負担は大幅に減り、利用者の治療開始も早まります。
オンライン診療は、特別なものではありません。適切に取り入れればきっと、介護施設のケアを根底から支える“力強い味方”となるでしょう。