厚生労働省の審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)で、来年度の介護報酬改定に向けた協議が進められています。【田中紘太】
居宅介護支援の焦点の1つは、事業所の経営を左右する「特定事業所加算」の見直しです。6月末の審議会では、委員から要件の緩和を促す声が相次ぎました。
今回は、このテーマで改定の行方を考察します。論点は多岐にわたりますが、ここではあえて2点に絞って私見を述べていきます。
◆ 不公平を生む「40%ルール」の限界
まずは、「要介護3以上の利用者が40%以上」という重度者要件について。審議会の意見交換では、複数の委員が見直しを求めたと報じられています。
私もこの要件は見直すべきだと考えています。何かとデメリットが多く、既に制度として限界を迎えているのではないでしょうか。
実際、この重度者要件は少なからぬ事業所にとって分厚い壁となっています。2名の主任ケアマネジャーなどの人員要件を満たしていても、割合がネックになって「加算Ⅱ」に留まらざるを得ないケースは珍しくありません。「加算Ⅰ」を取得するために、事業所が軽度者を敬遠するといった歪みを生む要因にもなっています。
また、住宅型有料老人ホームなどの集合住宅に重度者が集まりやすく、主にそこをターゲットとする併設型の事業所が有利になるという問題もあります。結果として併設型のビジネスモデルを助長しているほか、地域に根ざして献身的な支援をしている事業所が「加算Ⅰ」を取得できないなど、不公平な構造を生み出しています。
さらに、特定の利用者を40%の計算から除外できるルールも曖昧です。「地域包括支援センターから支援困難ケースを紹介された場合」などとされていますが、自治体によって定義や判断にバラツキがあり、現場に混乱を招く一因となっています。
この重度者要件の見直しをめぐっては、かつて慎重な姿勢をとっていた有力団体が前向きな発言をするようになっているなど、業界の潮目も変わってきていると感じます。来年度の改定で見直される可能性が高い ―― 。私はそう認識しています。
ただ、仮に重度者要件を廃止すると「加算Ⅰ」と「加算Ⅱ」の違いは人員要件のみとなります。多くの事業所が「加算Ⅰ」を取得するようになれば、居宅介護支援の給付費の膨張は避けられません。単純な廃止は財政当局の理解を得にくく、実現することはそう簡単ではないでしょう。
このため、特定事業所加算は「加算Ⅰ」と「加算Ⅱ」を統合しつつ、中間の単位数で再編するシナリオが有力ではないでしょうか。我々も含め、既に「加算Ⅰ」を取得している事業所にとっては一定の減収を意味しますが、制度全体をより適切な形に変えるためにはやむを得ません。この統合・再編が最も現実的な落としどころではないかと考えます。
◆ 負担軽減と利用者保護のジレンマ
2点目は、「24時間の連絡体制の確保」を求める要件について。こちらは重度者要件と異なり、少し慎重な議論が必要ではないかと考えます。
審議会では有力団体から、要件の緩和を呼びかける声が上がったと報じられています。夜間のオンコール対応を減らすなどして、ケアマネジャーの負担軽減や職場環境の改善につなげる狙いがあります。
もちろん、それが重要であることは言うまでもありません。緊急時などに電話を受けても、医療職ではないケアマネジャーにできることは限られるという現実もあります。ですから、私も要件の緩和を否定するつもりはまったくありません。
ただ、独居の方も含めて高齢者の生活を切れ目なく支えるという制度の趣旨は軽視できません。ケアマネジャーが大変なので要件を単に廃止すれば良い ―― 。一部にみられるそうした意見には、少し不安を覚えます。ケアマネジャーの負担軽減と高齢者の安心の両立を重視して、皆で知恵を出し合う丁寧な議論を期待したいところです。
現場サイドの我々にも、日頃のケアマネジメントやネットワークづくりの質を高めたり、テクノロジーをフル活用して生産性の向上を追求したりするなど、様々な観点からできることがあるのではないでしょうか。









