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2023年5月15日

【結城康博】たまには財務省を誉めたい! 人材紹介会社やサ高住の問題は競争原理の弊害

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筆者は長年、財務省の考え方に賛同できない部分が多々あった。とりわけ、介護保険に厳しい財政規律を求める姿勢を強く批判してきた。【結城康博】

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しかし、5月11日の審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)で提起した「人材紹介会社」や「サービス付き高齢者向け住宅」の問題に対する見解は、大いに賛同すべきと考える。いわば“行き過ぎた競争原理”の弊害を認識したといえるだろう。


◆ 人材紹介会社に規制を!


財務省は今回、介護事業者向けの人材紹介会社について、本人への「就職お祝い金」の禁止など現行の規制を徹底することに加えて、適切な手数料水準の設定も提言した。慢性的な介護人材不足にあえぐ介護業界が、重い手数料負担などで苦しんでいる現状を踏まえたものだ。


確かに、人材紹介会社の役割・機能を評価できる側面もある。また、人材マネジメント不足の介護事業者の“安易に人材紹介会社に依存する体質”も問題だ。


とはいえ、貴重な公費(税金)、保険料による介護保険財源の一部が人材紹介会社へ流れている実態は、やはり看過できない。このようなビジネスモデルで利潤を追求できるのは、介護業界の“行き過ぎた競争原理”の弊害ともいえる。


本来であれば、公的部門のハローワークなどを除く人材紹介会社には規制をかけるべきであった。昨今、公共政策全般において「規制緩和」を唱えることが良識派として認識されがちだが、公費や保険料を無駄に費やすことになる視点を忘れてはならない。

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◆ 供給が需要を生む


また、財務省は今回の審議会で、「サ高住などでケアマネジメントを提供する居宅介護支援事業所には『同一建物減算』を適用すべき」とも提唱した


これは、サ高住などの系列の居宅が無駄な介護サービスを盛り込んだケアプランを作成することで、同じく系列の介護事業所の利潤を確保する“呼び水役”を果たしている、という実態を念頭に置いたものだ。


確かに、これまでの介護報酬改定で各種対策による一定の規制はかけられてきているが、「イタチごっこ」で十分な効果が出ているとは言い難い。居宅介護支援への「同一建物減算」の導入は必要だろう。


やはり、一部のサ高住などには無駄な公費が使われていると言わざるを得ない。例えば、整備を後押しする新築時の補助金や税制優遇。地域によっては空床が目立ち、真に「需要」があるのか疑わしいケースも散見される。


当然だが、競争原理を用いれば一定のルール下であっても「供給が需要を生む」現象は避けられない。今、介護保険が創設されて24年目を迎えるが、「競争原理によって介護システムは良くなっていく」という考え方を改める時期が来ているのではないだろうか。


◆ 警戒すべき財務省の考え


もっとも、財務省の今回の提言で、相変わらず厳しい「財政規律」が強調されている点は看過できない。


例えば、「介護施設や通所介護は人員配置の効率化を」「介護報酬改定も含め、給付費自体の抑制に取り組む必要がある」「一般的な中小企業に比べて介護事業者の収益は安定している」といった見解からは、次の2024年度の介護報酬改定も引き続き厳しい姿勢で臨む、という明確な意思が読み取れる。


介護報酬改定はいつも最終的に政治決着となるが、次回も非常に厳しい展開となることに変わりはない、という現実を我々は再認識する必要があるようだ。


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