第一法規 介護ねっとシリーズ
2026年4月7日

【村上久美子】今年の春闘の光と影 さらに開く他産業と介護業界の格差 賃金体系の抜本転換が急務

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《 UAゼンセン日本介護クラフトユニオン・村上久美子副会長 》

今年の春闘では、私たちの労働組合「日本介護クラフトユニオン(NCCU)」の上部団体である「UAゼンセン」の正社員組合員が、過去最高水準の成果を獲得している(3月19日現在)。【村上久美子】

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賃上げの平均は1万8219円(5.45%)、うちベースアップなどは1万2966円(3.88%)。物価高が続く中、賃金水準そのものを押し上げるベースアップが広がり、「UAゼンセン」全体として大きな前進があったことは間違いない。


しかし一方で、介護の現場にいる私たちが直面している状況は大きく異なる。


昨年12月から今年5月までの補助金として、介護職員には最大で月1万9000円分が支給され、さらに今年6月の臨時の介護報酬改定では、「処遇改善加算」の拡充でこの最大1万9000円分(定期昇給分2000円を含む)が継続されることになった。


一見すれば大幅な改善だが、実際の労使交渉の回答では平均で1万2000円前後の賃上げにとどまっている(4月3日現在)。制度上の数字と、現場で実際に受け取る賃金との間には大きな乖離があり、「思ったほど上がっていない」という声も多い。


この差は、単なる「他産業と介護業界の格差」にとどまらない。同じ「UAゼンセン」の中でも、賃上げのスピードが異なることで、その格差が広がり続けている点にこそ問題がある。


他産業の正社員組合員の賃金はベースアップを基軸に積み上がっていくのに対し、介護業界は補助金や加算による上乗せが中心で、基本給は据え置かれたままである。積み上がる賃金と、積み上がらない賃金。この構造的な差が、今年の春闘でより鮮明になった。


さらに、今年6月の臨時改定の賃上げには定期昇給分の2000円が含まれている。本来は事業者が独自に実施すべき昇給が制度に組み込まれており、結果として「処遇改善加算」が賃上げを肩代わりしている形になっている。

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加えて、厚生労働省は「処遇改善加算」について「基本給による賃上げが望ましい」と求めているが、現場では依然として手当や一時金による対応が中心である。


その背景には、加算財源の継続性に対する不透明さや、将来的な制度変更への懸念がある。事業者が固定費となる基本給の引き上げに慎重にならざるを得ず、結果として調整しやすい手当に依存する構造が続いている。こうした状況では、賃金の安定的な底上げにはつながらない。


このままでは基本給は上がらず、手当中心の賃金では一時金や退職金にも十分に反映されない。将来設計が描きにくく、「この処遇では続けられない」と感じる人が増えるのもやむを得ない。とりわけ、経験を積んだ人ほど離職を考えるのは当然である。


今年の春闘は、他産業と介護業界の格差が「UAゼンセン」内でも大きく広がる転換点となる。だからこそ、補助金や「処遇改善加算」による上乗せに依存するのではなく、基本給そのものを引き上げる賃金体系への転換が不可欠である。


これは介護職に限った問題ではない。賃金が上がらない分野からは人材が離れていく。その現実を直視し、賃金の仕組みそのものを見直す段階に来ている。介護の賃金を「社会のインフラへの投資」として位置づける視点が、いま強く求められている。


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