【結城康博】介護保険の利用者負担の引き上げは見送りか 医療の窓口負担増が優先されると予測
これから介護保険制度はどう改正されるのか。その注目点の一つとして、2割の利用者負担を求める対象者の拡大がある。【結城康博】
厚生労働省は昨年末の審議会(社会保障審議会・介護保険部会)で、2割負担の対象拡大を実施する場合の所得基準の案などを提示。今年度、2026年度中に結論を得る日程を確認した。
ここで思い切って予測したい。政府は今年度、2割負担の対象拡大を見送るのではないか。この予測が外れればお詫びするしかないが、今回は少しお付き合いいただきたい。
◆ 医療の窓口負担を優先か
昨年10月、自民党と日本維新の会は「連立政権合意書」を取り交わした。その中には、医療費の窓口負担について「年齢によらない真に公平な応能負担の実現」との文言が盛り込まれており、「2026年度中に具体的な制度設計を行い、順次実施する」と明記されている。
高齢者の窓口負担は現行、70歳から74歳が2割、75歳以上が1割と低く抑えられている(それぞれ所得に応じてより高い負担割合も設定されている)。
財務省は4月末の審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)で、70歳以上の窓口負担について「可及的速やかに現役世代と同様に原則3割とすべきで、その実現に向けた具体的な道筋を明確に示すべき」と提言した。
当然、低所得者らには一定の軽減措置が用意されるだろう。ただ今後、こうした提言を具体化することの是非が政府・与党内で検討されることは確実な情勢だ。
昨年の高齢社会白書によると、2024年の70歳から74歳の就業率は35.1%だった。2014年の24.0%と比べて大幅に上昇している。
政府はこれを踏まえ、70歳から74歳であれば年金給付とあわせて一定の負担能力があると考え、原則3割の窓口負担の実現を図るのではないだろうか。
しかも財務省は、「現行の線引きをゼロベースで見直す」「新たに75歳以上となった高齢者の窓口負担は74歳までの負担割合のまま維持すべき」とも提言した。70歳から74歳の原則3割を実現した後に、75歳以上についても原則3割へ移行していくべきと促している。
もっとも、2024年の75歳以上の就業率は12.0%とさほど高くない。このため、仮に75歳以上の窓口負担の引き上げが実施されるとしても、3割負担の対象者は70歳から74歳よりも小幅にとどまる可能性がある。
◆ 介護保険は後回し?
最終的には官邸サイドの決断となるであろうが、今後の高齢者の負担増はマクロ的に予測すべきである。
つまり、政府の最優先事項は医療費の窓口負担、それも70歳から74歳を原則3割とすることで、その次に介護保険の2割負担の対象拡大、もしくは75歳以上の窓口負担の引き上げとなるのではないだろうか。なぜなら、70歳から74歳の原則3割が実現されれば、一定の受診控えも生じてかなりの財源効果が期待できるからだ。
一方、介護保険の2割負担の対象拡大が実現しても財源効果は大きくない。
厚労省の案によると、2割負担の対象範囲が最大の「年収230万円以上」まで引き下げられると、高齢者の所得上位約30%まで、約35万人が新たに負担増となる。ただし、それで給付費を抑制できるのは、わずか約210億円にとどまるという。この規模は、120兆円を超える国の予算全体で考えると大きいとはいえない。

いくら高市政権が盤石と言えども、後々の国政選挙への影響を考えれば、医療と介護の自己負担の引き上げをこれから同時に断行するリスクを、あえてとるとは考えにくい。
そして、介護保険の2割負担の対象拡大には、そのリスクをとるだけの十分なリターン(財源効果)がない。高齢者や介護業界、野党などから強い反発・批判を受けながら、それでもなお断行するほどの合理的な理由がない。
したがって、介護保険の2割負担の対象拡大は当面先送りされるのではないか。政府はそうすべきだし、そうなる可能性が高いと考える。繰り返すが、予測が外れたらお詫びするしかない…。







