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2026年6月1日

【鎌田大啓】介護現場の生産性向上、財務省が求める「意識改革」の誤解と本質 成否を分けるアプローチ

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《 株式会社TRAPE・鎌田大啓代表取締役 》

財務省は4月28日に開催した審議会(財政制度等審議会・財政制度分科会)で、介護現場が生産性向上に取り組むことの重要性を改めて強調しました。【鎌田大啓】

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対応可能な利用者が増え、収益の向上につながり、その収益が職員の賃上げやさらなる生産性向上の投資につながる「好循環」の確立を求めています。あわせて、介護テクノロジーを適切に活用するためには、「経営層の意識改革」が必要であるとも指摘しています。


◆「効率化」ではなく「専門性の回復」


私は2017年の黎明期から、全国の自治体やワンストップ窓口などを通じて、多くの介護事業所の生産性向上の伴走支援に関わってきました。


その経験から感じるのは、今回示された方向性は非常に重要である一方で、言葉だけが独り歩きすると誤解も生みやすいということです。


だからこそ、ここでは財務省の指摘を深掘りしていきたいと思います。「好循環とは何か」「経営層の意識改革とは何か」。この2点について、伴走支援の経験を踏まえながら丁寧に整理していきます。


まず、介護における生産性向上とは、「少ない人数で多くの利用者をみること」ではありません。厚生労働省も整理している通り、「介護の価値を高めること」です。


私は、その価値とは「職員・利用者の体験価値を高めること」だと考えています。利用者がその人らしく暮らし続けられること。家族が安心できること。そして職員が、専門職としてやりがいや誇りを持って働けることです。


しかし現場には、長年積み重なったムリ・ムダ・ムラが多く存在しています。それらが、本来行いたいケアや専門性の発揮を難しくしたり、経営を苦しめたりする大きな要因になっているケースも少なくありません。


だからこそ、生産性向上の第一歩は「現場の引き算」です。不要な負荷を減らし、余力を生み出すこと。この「余力」が極めて重要です。


財務省は、生産性向上によって現場に余力が生まれることから、対応可能な利用者が増えるという効果が出ると説明しています。これは確かにその通りです。ただし、それは「少ない人数で、もっと多くの利用者をみなさい」という意味ではありません。


本当に重要なのは、最初に「職員の余力」が生まれる結果、だからこそ、職員は利用者と向き合い、学び、新しいケアを実践できるということです。チームで振り返り、現場をさらに改善することもできるようになります。つまり、生産性向上とは、「効率化」ではなく、「専門性を発揮できる状態を取り戻すこと」なのです。


その結果、利用者や家族から信頼され、地域から必要とされる事業所になっていきます。そして稼働率が向上し、利用者が増え、収益が生まれ、その収益を賃上げや教育投資へ再投資していく。このサイクルこそが、財務省のいう「好循環」の実像なのだと思います。

NTTデータ 介護経営・業務効率化ソリューション解説記事はこちら

◆ テクノロジーを「最強のパートナー」にする条件


その好循環を後押しする手段として、現在、介護テクノロジーやAIの存在が非常に大きくなっています。しかし、これらは「入れれば成功するもの」ではありません。


実際、伴走支援の現場では、「高額な機器を導入したが使われていない」というケースもたくさん見てきました。その多くは、現場の課題の整理や対話が不十分なまま、「機器だけ」が導入されているといった状況でした。


だからこそ、「経営層の意識改革」が重要になります。


ただ、それは単に経営者が「テクノロジーの導入を推進しなさい」という指示を出すことではありません。私は、トヨタ自動車の豊田章男会長が語られていた「トップダウンとは、トップが現場までダウンしていくこと」という言葉が非常に印象に残っています。


つまり、経営者自身が現場へ降り、現場の声を聞き、何に困っているのか、その因果関係を理解すること。これが生産性向上のスタート地点なのです。


現場が「なぜ今取り組むのか」を理解し、自分たちごとになったとき、テクノロジーは初めて「最強のパートナー」になります。


介護の生産性向上とは、単なる効率化ではありません。職員が専門性を発揮できる環境を取り戻し、利用者・家族・地域へ、より良い体験価値を持続的に届けていくための組織変革なのです。


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