【村上久美子】他産業との賃金格差8万円 介護職の「他職種と遜色ない処遇改善」で問われる国の覚悟
7月21日、今年の「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2026)」が閣議決定された。【村上久美子】
介護分野で最も注目すべきは、来年度の介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定に向けて、「他職種と遜色ない処遇改善の実現を図る」と明記された点である。
介護現場にとって、処遇改善が政府方針に盛り込まれたこと自体は歓迎したい。しかし同時に問われるべきは、国がこの言葉の重みを本当に理解しているのか、ということである。
「他職種と遜色ない」とは、少し賃金を上げればよいという意味ではない。介護職の賃金は、全産業平均と比べてなお大きな開きがある。統計の取り方にもよるが、その差は月額で約8万円に及ぶとされる。
これほどの格差を前に、数千円、あるいは1万円程度の改善で「遜色ない」とは到底言えない。介護人材不足の背景には、仕事の専門性、身体的・精神的負担、命と生活を支える責任の重さに、賃金水準が見合っていないという構造的問題がある。
もちろん、事業所に余力があるわけではない。人件費に加え、食材費、光熱費、燃料費、委託費なども上昇し、経営環境は厳しさを増している。
しかも介護報酬は公定価格であり、事業所が自ら価格を引き上げてコスト増を転嫁することはできない。
だからこそ、「骨太の方針」が掲げる公定価格への必要な対応を、次期改定で具体化する必要がある。報酬上の十分な手当てがないまま賃上げだけを求められても、現場は対応できない。したがって、次期改定では、職員の賃上げと事業所の経営安定を一体で考える必要がある。
◆ 将来を描ける賃金水準を
さらに重要なのは、賃上げを一時的な補助金や加算の積み増しだけで終わらせないことである。現場が求めているのは、将来の生活設計を描ける安定した賃金水準であり、制度改定に左右される不安定な処遇改善ではない。介護を選べる仕事にするには、賃金が継続的に上がる仕組みが必要である。
一方で「骨太の方針」は、現役世代の保険料率の上昇を止め、引き下げていく方針も掲げている。
財源制約があることは理解できる。しかし、それを理由に処遇改善が小幅にとどまれば、「他職種と遜色ない」という文言は、現場に対する空約束になってしまう。必要なのは、現在の賃金格差をどの期間で、どの水準まで縮めるのかを明確に示すことである。
介護は、人が人を支える仕事である。制度があっても、担い手がいなければサービスは届かない。「他職種と遜色ない処遇改善」と掲げた以上、国にはそれに見合う覚悟と財源措置が求められる。次期改定で問われるのは、現場が実感できる賃上げを本当に実現できるかである。









